18.すごいサラサラでフワフワだあ。

「それじゃあいくよ!!」


 ユーリとルカが少し離れたところで見守っている。

 街から徒歩で出て、人目のないときを狙って僕のギフト【聖獣召喚】を使うのだ。


「いでよ聖獣!! ――【聖獣召喚】!!」


 グワン、と目の前の空間が揺らぐ。

 聖獣というだけあって、ソレは光を纏って現れた。


 真っ白い長い毛をもつ猫だ。

 サイズ感も普通の猫といった風で、僕でも両手で抱えられそうな大きさだった。

 パッチリとした瞳が僕を見つめている。


「君が僕の召喚に応じてくれた聖獣……」


「左様、儂は汝に召喚された猫の王」


「喋った……!?」


「聖獣は高い知能を持ち、人語を介するものも少なくない。驚いている場合ではないぞ小童。さあ召喚に応じたのだ、契約を果たすべきであろう」


「契約……名前を付ければいいんだね?」


「左様。分かっているなら早うせい」


 僕は白い綺麗な猫の聖獣の名前を考える。

 こんなに可愛い猫が出てくるとは思っても見なかったけど、何という名前がいいだろうか……。


 遠巻きにしていたユーリとルカがいつの間にか僕の近くに来ていた。


「猫の聖獣かあ。戦えるのか?」


「うわぁ、凄い綺麗な毛並み。可愛いなあ可愛いなあ!!」


 外野が好き勝手に聖獣を品評している。

 猫の聖獣は動じずに僕をジッと見つめていた。


「よし、凄く賢そうだし、ソフィアと名付けよう。それで、……いいかな?」


「古代語で叡智か。儂は気に入ったぞ。ところで儂の主の名をまだ聞いておらぬのだが」


「あ、ごめん。僕はマシュー。よろしくソフィア」


「うむ。マシューか。儂は戦いは好かない。だが困ったことがあれば何でも言うがいい。力になると誓おう」


「うん、ありがとうソフィア。それで早速なんだけど、頼みがあるんだ」


「良かろう。なんでも言ってみよ」


 僕は自分の聖獣であるソフィアに初めての頼み事をする。

 互いに適度な緊張感のある中、僕は告げた。


「撫でさせて!!」


「…………まあよかろう」


「ほんと!? ありがとう!! ……うわあ、すごいサラサラでフワフワだあ」


 僕は素早くソフィアに近づき撫でた。

 それを見たルカが「わ、私も撫でたい……!!」と言う。


「儂は愛玩動物ではない。主であるマシューだから撫でさせるのを許しておるのだ」


 もふもふ。


「マシューよ、そろそろいいか? 儂は聖獣ゆえにノミもつかぬ。毛づくろいは必要ない」


 もふもふ。


「……マシューよ」


 もふもふ。


「ええい、儂を無視するな!! 用事がないならとっとと送還せぬか!!」


「あ、ごめんソフィア。つい気持ちよくて。……じゃあまた何かあったら呼ぶから」


「うむ。困ったことがあれば頼れ。道は示そうぞ」


「ありがとう。またねソフィア!」


 僕はソフィアを送還した。

 ルカが「あ~~~……」と声を上げるが、ソフィアに撫でられることを拒否されていたからどうにもならない。


 ともあれこれで、僕のひとつ目のギフトはソフィアの召喚と送還に決まったのだ。


 ユーリは半眼で「……戦えそうには見えなかったよなあ」と呟いた。

 確かにソフィアは戦闘には向いていないようだったが、魔力感知によればかなりの魔力を内包しているから、もしかしたら凄い魔術を使えたりするかもしれない。

 それに困ったら力を貸す、と言っているのだから何もできないとは思えないのだ。


 ……何ができるのかは具体的には言わなかったけど。


 ともあれ聖獣との邂逅は終わった。

 僕たちは旅路に戻る。

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