第12話 能力を知ろう#3
「レベルアップ......?」
ユトゥスはその声に首を傾げた。
アイアンベアを倒した後に、突然頭の中に流れてきた音声。
それ自体は何も問題ない。問題は「レベルアップ」という言葉だ。
なぜなら、レベルアップは
ユトゥスは確かめるように冒険者カードで
やはりレベルは「1」で固定されていて動きようがない。
となれば、この言葉の意味はどういう意味か。
ユトゥスがそう思っていると、その音声には続きがあった。
『冒険者ユトゥスはレベルアップをしました。
しかし、レベルアップの制約が正しく機能しないため、代わりに設定されたレベルアップボーナスの機能が発動します』
「レベルアップボーナス?」
今までに聞いたことのない言葉にユトゥスは再び首を傾げる。
いや、これまで自分に無かっただけで他の人にはあったのだろうか。
『レベルアップに使用する経験値を<反逆シリーズ>のレベルに一部譲渡。
また、レベルアップボーナスとして、好きなスキルを習得してください。
現在習得できるスキルは五つまでです。お好きに選びください』
瞬間、ユトゥスの目の前には空中に表示される能力値とは別に、習得可能なスキル一覧表として様々なスキルが並んだ。
画面いっぱいに表示されるスキルの数々。
画面横にあるバーに触れて下に下げればさらにスキルが続いている。
その数は優に百個は超えているだろう。一体どこまであるのか。
その画面にユトゥスは目を白黒させる。
これが言葉通りの意味なら本当にこの中から好きに選んでいいということになる。
つまり、ユトゥスの好きなようにスキルをカスタマイズできるということだ。
加えて、選べるスキルの中には職業専門スキルもあるようだ。
職業専門スキルとは、その職業だけにしか発現しないスキルである。
例えば、ドンバスのような「重騎士」には盾を使ったスキルが習得できる。
しかし、ドンバス以外の盾騎士系職業を持たないサクヤ、ユミリィ、アニリスには、いくら盾を上手く使いこなし、レベルアップしようともスキルの習得は出来ない。
それが専門スキルというものであり、専門であるが故に強力なスキルであることが多い。
「つまり、それを習得できる今の状況も神様の与えてくれた
本来、与えられた職業にしか覚えることが出来ないスキル。それ無条件で取得できる。
神様が作り出した
とはいえ、ユトゥスも死にたくないので選ばない選択肢はない。
それにユトゥスの目標は強くなること。
少しズルいかもしれないが、スキルを得られて強くなる手段が手に入った。
これを活用しない手はない。強さを求めるということはそういうことだ。
ユトゥスとて半端な覚悟でパーティから脱したわけじゃない。
「ふむ、どうするか......」
ユトゥスは顎に手を当てて、スキル一覧表を見ながら思案する。
まず最初に選びたいのは職業スキルに頼らないものだ。
バカ正直に強いスキルを選んでも効果が無かったり、職業次第で宝の持ち腐れになったりする可能性がある。
例えば、先ほどの「重騎士」のスキルに<シールドパリィ>というものがある。
そのスキルは相手の攻撃をタイミングよく弾くと、盾を無傷のまま攻撃を防ぐことが出来るスキル。
魔法攻撃を弾いたり、相手の剣を弾いて隙を作り出したり。
しかし、それを上手く活用するには<盾術>という盾を上手く使いこなすスキルが必要になる。
「.......特に盾らしきものは見当たらないか」
ユトゥスはふと周囲を見る。
周囲に転がっている死者の荷物には盾らしきものがない。
きっと仲間内に「重騎士」系の職業を持つ人がいなかったのだろう。そういうパーティもよくある。
また、接近して戦うのはあまり良くない気がする、とユトゥスは思った。
なぜなら、当たれば死ぬの紙装甲だからだ。
現状、ユトゥスのレベルは「1」で固定されており、伸びしろが無い。
その状態で近接戦を挑むのはあまりにも無謀すぎる。
先程はアイアンベアだったから良かったものの、魔物によっては複数の腕を持つ魔物もいる。
直近で例えるなら、スメィヤパンサーだろうか。
あの魔物は尻尾に三匹の蛇を飼っている。
ユトゥスがスメィヤパンサーの爪攻撃を盾で防御していたとして、尻尾に噛みつかれればその時点で終わりだ。
加えて、ユトゥスの筋力値ではそもそも攻撃を耐え切れない。
よって、無謀な近接戦のために防御系のスキルを覚えるのはあまりにも愚かだ。
とはいえ、いざという時の防御系のスキルは持っておいた方が良い、とはユトゥスも思っている。
なので、それは取得したとしても一つだ。
それ以外は技能スキルや攻撃スキルに回した方がいい。
故に、これからのユトゥスの戦い方は――
「これ、これ......それから、これもあった方が良いか」
ユトゥスはブツブツと呟きながら空中に浮かぶ画面とにらめっこをし続ける。
そして、選び出したスキルは以下の通りだ。
―――
名前 ユトゥス(19) 性別 男 レベル1(固定)
<職業> 反逆者
筋力値 15
防御値 10
魔防値 10
魔法値 10
行動値 10
魔力値 15
器用値 10
<魔法・技能スキル>
<ユニークスキル:反逆シリーズ>レベル1
「逆様」:レベル1(KP:1)
「逆行」:レベル1(KP:3)
「逆転」:レベル1(KP:5)
<技能スキル>
「剣術」:レベル1 「弓術」:レベル1 「鑑定」:レベル1
「魔力障壁」:レベル1 「魔力感知」:レベル1
<反逆シリーズスキルに必要なポイント>
カルマポイント(KP):所持値 62(最大80:ただしロック解除で上限解放)
詳細 善業値:52 悪業値:10
<称号>
努力の鬼、不屈の精神、弱者の鏡、パーティの姫
反逆の使途、△※×◇(※読めない)の願いを叶える者、呪われし者
――――
まず、これからのユトゥスの戦い方は遠距離メインとなる。
つまり、メイン武器は弓だ。道具はかつての冒険者の遺品から頂いた。
先ほど言った通り、ユトゥスは近接戦は出来る限りしたくない。弱いから。
ユトゥスは勇者のように剣で戦うのに憧れていた。
しかし、憧れていた前線で戦う冒険者とは程遠くなってしまったが、こればかりは致し方ない。
夢を追いかけて死ぬのはいい。しかし、残してる者達を悲しませてまでは出来ない。
よって、ユトゥスの選択は弓であるが、遠距離も決して安全では無いことは覚えておかねばならない。
例えば、相手が範囲攻撃魔法を放ってきたとしよう。
その範囲にもよるが、広ければユトゥスの行動値では避けれない可能性が出てくる。
それはつまり敗北であり、同時に死でもある。
そして、技能スキルの「剣術」はオマケだ。
弓がメイン武器だが、接近されれば役に立たない。
即座に距離が取れればいいが、ユトゥスの行動値ではそれが難しい。
その時にはどうしても近接戦は避けられない。そのための保険である。
幸い、ユトゥスは技術だけはそれなりに持ってるいるため、目で追える範囲であれば対抗できる。
次に「鑑定」だ。
これは相手の情報を知るためにユトゥスが絶対に欲しかった一つだ。
情報が手に入れば、それだけこちらの作戦が立てられる。つまり、生存確率が上がる。
また、「鑑定」は所持者があまり多くないらしいため、情報戦で有利になるのも大きい。
同様に「魔力探知」も相手の位置を知るには重要なことだ。
能力が上がれば、相手の位置や人数だけではなく、魔力量も測れ誰が魔術系の職業持ちかを看破できる。
最後に、「魔力障壁」だがこれも保険である。
最初にユトゥスが考えていた”いざという時の防御スキル”である。
このスキルは魔力を消費して発動させる防御障壁であり、魔力を込めれば強度が上がる。
しかし、ユトゥスの魔力値からすれば、使えて一瞬なので使いどころは考えねばいけない。
「......そうだな。これにするか」
正直、ユトゥスとて初めはこのスキルではなく魔法系のスキルにしようと考えていた。
しかしその時、<逆転>でスキルも入れ替えできるのでは? とユトゥスはふと思ったのだ。
今の所その確証はない。
今後<逆転>のスキルレベルを上げなければ、確認の仕様がない。
しかし、もし仮にそうだとすれば、それはかなり厄介なことになる。
例えば、戦っている相手が魔法系の職業だとする。
その職業は筋力値と行動値が低い傾向にある。
つまり、戦うには逆に筋力値と行動値の高い近接系職業が有利ということだ。
また、その相手は魔法メインなので<剣術>系スキルは絶対に覚えられない(稀に「魔法剣士」という例外がいるらしいがそれは除いて)。
であれば、<剣術>を持つユトゥスが近接戦に持ち込めれば、必然と勝率は高くなる。
しかし、もしそこで相手の魔法を利用しようと<逆転>を発動させ、スキルが入れ替わったならどうなるか。
能力値の入れ替えのように同じ項目ならまだいい。
しかし、スキルは膨大だ。ランダムで入れ替わるという可能性もある。
そう考えると話は全然変わってくる。
先程の例え話で言えば、ユトゥスは魔法で虚を突けるだろう。
しかし同時に、相手は使えなかった<剣術>が使えるようになるかもしれない。
<剣術>は剣もとい棒状のものを振るう際に攻撃力補正するという効果がある。
つまり、相手の闇雲に振った杖が直撃すれば、それだけでユトゥスの能力値では致命傷だ。
そして、勝負の世界はその一瞬で方がつくことがザラにある。
故に、出来る限り魔法系もとい攻撃系のスキルを得ることは控えた方が良い.....のかもしれない。
ユトゥスは自分の思考に苦笑いを浮かべる。
そうなると決まったわけでもないのに、すごい置きに行ったような考えだ。
しかし、より生存を考えるなら身を固めることが先決。
「そのためには『反逆者』能力のより詳細な情報が必要だ」
故に、検証しながら帰る道を探すとしよう。
「この力を使って必ずここから生きて脱出してやる」
ユトゥスはそう意気込むと歩き出した。
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