第15話 無限NTRなんてごめんだ

 あれから時間が経ち――午後十五時前。


 殺人事件が起きたことで学校は大騒ぎになった。

 パトカーや救急車が何十台も殺到し、警察官の数もとんでもないことなっていた。それともマスコミも。


 校長が亡くなった……。


 このニュースはすぐに全国ニュースに。そして、ネットニュースやSNSで拡散された。

 俺の学校ということもあり『ニュー』がトレンド入りしてしまった……。俺の存在はかなり広まり、しかも俺が今回の事件に絡んでいるとこれまた大騒動に。

 某掲示板でもスレが乱立してとんでもないことになってしまった。


「…………うむむ」

「聖くん、大丈夫?」


 教室でもない空いている部屋でスマホを覗いていると、希愛が俺の手を握ってきた。


「ありがとう、希愛。いや、ここまで事が大きくなるとはね」

「そうだね。校長先生が刺されてしまうなんて思わなかった」

「悪いのは酒井だ。アイツは殺人未遂の容疑で逮捕された」


 今後は殺人で再逮捕されるだろうな。こうなってしまえば、アイツはもう教師としての人生は終わりだ。もう会うこともないだろうな。


 あれから事情聴取を終え、俺と希愛は空き教室で避難していた。


 クラスへ戻ればクラスメイトどころか学年中が俺たちに情報を求めてくるだろうからな。さすがに対応しきれない。


 だから、こうして希愛と二人きりとなっていた。

 だが、事件のせいで下校時間が早まった。もうみんな帰っている頃合いだ。


「なんか、とんでもないことになっちゃったね」

「そうだな。でも、希愛を守れた」

「うん、ありがとう。聖くんのおかげだよ」


 微笑む希愛は本当嬉しそうだった。

 この笑顔が見れただけで俺は嬉しい。


「なあ、希愛。やり直さないか」

「いいの? 聖くん、生徒会長が好きなんじゃ……」

「いや、俺がバカだったんだ。やっと目が覚めた。希愛しか考えられない」


 浮気なんてもっての他だった。俺が人気者だからってやりすぎた。深く反省している。これからは配信時間も減らし、希愛との時間を増やす。


「よかった。やっと元に戻れるんだね」

「もう希愛を他の男に取られたくないからな」

「大丈夫だよ。わたしは最初からずっと聖くん一筋だもん」


 マジか。そこまで思ってくれていたんだな。

 今なら希愛は分かってくれるはずだ。


 俺は、好きという気持ちに嘘偽りがないという証拠を見せる為に、キスをしようとした。


 希愛は俺を受け入れてくれ――。



【………………グニャ】



 視界が崩れていく。


 お、おい…………なんだよコレ。やべえ、なんか逆流するような感覚が――!



『……先輩が……』



 これは希愛の声か。



『聖より俺の方がいいよな!?』

『…………はいっ、もっと強く突いてくださいっ』



 希愛が気持ちよさそうに声を漏らし――違う違う違う!! これは“幻”だ。“悪夢”だ。振り払え、俺。


 今悪夢を見るわけにはいかないんだああああああああああああ!!!


 もう無限NTRなんてごめんだ。


 俺は抗う、抗って見せる。


 あっちは現実なんかじゃないッッ!!!


 こっちが本物なんだ!



「――――ふああああああああ……!!」


「ど、どうしたの聖くん!?」


「……っぶね。希愛と寝取られるところだった」


「え? わたしはここにいるよ。安心して」



 希愛は俺を包み込んでくれた。そして、キスをしてくれた。……ああ、良かった。これは本物だ。




 だが、この先にまだ試練があるとは俺は思いもしなかった。




 ――三日後。



「……頼む。俺の希愛を寝取ってくれ……!!」



 信頼できるある“某有名人”に頼み、俺は彼女を差し出すことにした。でも、仕方がなかったんだ。こうしないと希愛は……助からないから!

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