第16話 寝取ってもらうしかない!!(疑似的に)
あの事件から三日後の朝を迎えた。
やっと平和を取り戻し、希愛との関係も修復された。あの後、俺はメッセージアプリで千夜に別れを告げた。
残酷なことだが仕方ない。
俺は希愛を改めて好きになってしまったから……。
千夜の返信はない。
学校で改めて謝ろう。
家を出て学校を目指す。周囲から視線を感じる。……そりゃ、そうか。あの事件から三日経っても尚、俺の話題一色で染まっていた。
俺のようなインフルエンサーが事件に巻き込まれた。話題にならないわけがなかった。
そこら中で情報が拡散されて、俺と高校は一躍有名に。
毎日のようにマスコミも殺到していた。
あ~、今もどこかの記者とか尾行してんな。だるッ。
走って学校へ向かう。なんとか学校に到着してマスコミを撒いた。さすがに学校の中までは入ってこれまい。
校内に入って廊下を歩いていると背後から声を掛けられた。
「おはよう、聖くん」
「ん、おう。希愛か。おはよう」
「あれから少しは落ち着いたね」
「そうか? 俺なんかマスコミだとか怪しい記者に追いかけられっぱなしだよ」
「え~…、それは大変だね」
「悪化するようなら転校とか退学も視野かな」
「それは嫌だな……。聖くんと一緒に卒業したいもん」
寂しそうな表情を見せる希愛。そんな顔されると……ちょっと困るな。いや、そうだな、もう少しだけがんばってみようか。
教室に入るとクラスメイトは比較的静かだった。
当初は大騒ぎで処理するのに大変だった。だが、新しい担任の鶴の一声でみんな俺に殺到することはほとんどなくなった。
新担任は若い女性で
男共の注目もそっちへ向いている。
席へ座り、スマホを覗く。
当然のごとく俺の話題ばかり。そっちはどうでもいいな。
なにもなかったので授業を受けていく。
今日は退屈に終わりかな――そう思ったが。
放課後にそれは起きた。
希愛がいなかったので、俺は心配ながらも廊下を歩く。連絡もつかないし、どこへ行ったんだ……?
そんな時だった。
廊下の奥から誰かが近づいてきた。女子だ。
「…………ニューくん」
「……! 千夜なのか」
前髪をまるで幽霊のように垂れさせ、目も充血していた。……こ、怖ッ! てか、なんでこんなことになってんだよ。
「ねえ、どうして別れるなんて言ったの……」
「え……」
「ねえ、おかしいよね。ニューくん、私のこと好きって言ってくれたよね!? ニューくんは、私とえっちしたじゃん! だから好きって好きって好きってことだもんね!?」
包丁を向ける千夜。ちょ、ちょ……マジかよ。まさか俺が振ってから千夜はずっと思い悩んでいたのか。いや、そうだろうけど、これはあまりに想定外すぎた。
「ちょっと待て、千夜。落ち着け」
けれど、千夜はぶるぶる震える腕で包丁をどんどん向けてきた。やべえって。刺されるって……!!
「ねえ、やり直そう……」
「無理だ。俺は希愛が好きなんだ」
「そ、そう……じゃあ、ニューくんぶっ殺して私も死ぬしかないよね…………えへへ」
ブンッと包丁が頬をかすめた。
え……。
痛ぇッ!?!?
うそ、うそだろ……!
俺、殺される…………!?
まさか、そんなウソだ。千夜は俺を諦めたと思っていた。あのあと何度も連絡したが、出なかったじゃないか――!
「やめろ」
「やめない。ニューくんが手に入らないなら、私の手で殺す」
「やめてくれ!」
「死んで……死んでちょうだい!!!」
胸を刺されそうになり、俺は叫んだ。
「ちょっと待ってくれよ!!」
「……ッ!」
寸でのところで千夜は包丁を止めた。
「……確かに俺は希愛とヨリを戻した。だけど、まだ完全に復縁したわけじゃない!!」
もちろん、命が惜しいのでウソをついた。許してくれ!
「じゃあ、証拠を見せて」
「え……」
「希愛ちゃんが他の男と付き合ってたら信じる」
「…………は?」
「じゃあ、殺すよ」
「分かった分かった!!」
ぐ、くそう……千夜を説得する方法なんてあるのかよ。
考えろ、俺。
考えまくれ俺。
……!!
そうだ。
この方法で危機的状況を乗り越えるしかないッ!!
やってやらああああああああああ!!
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