第13話 寝取られを阻止せよ

『――――ぱんぱんッ!』



 まただ……俺はまた“彼女”を寝取られた…………。



「うあああああああああああああああ!!」



 飛び起きると、そこは自分の部屋だった。……な、なんだ悪夢を見ただけか。つか、この無限NTRいつまで続くんだよ。クソがっ!

 全身が汗でまみれていた。長時間サウナにいたようなレベルだ。こりゃベタベタだぁ……。


 シャワーを浴びにいこ。


 気づけば朝七時半。そろそろ学校へ向かうか。

 メッセージアプリには膨大なメッセージが。いちいち見ている暇はない。――が、千夜からの連絡が入っていた。



【千夜】:ごめんね

【千夜】:また今度話せるかな

【千夜】:本当にごめん本当にごめん本当にごめん

【千夜】:配信みたよ。あれって大槻さんだよね

【千夜】:先生となにかあったの?

【千夜】:ごめん、明日も学校いけない



 そうか、俺の配信を見ていたんだな。……って、やっぱり北村の件がショックらしい。うーん、お見舞いに行こうかな。

 俺が出来ることと言えばそれくらいだ。


 返信をしておき、俺は学校へ。


 道中で俺は声を掛けられたりするが、挨拶だけして進む。やはり、俺が『ニュー』であることが周知されていて、直接相談に来る人もいた。断るけどな!


 そんな暇なねーんだ。今は『酒井』の件が最優先である。昨晩は希愛に勇気を与え、断るように説得した。

 きっと大丈夫だと信じたい。

 でも、俺は担任である酒井が幻で見たようなことをしでかしそうで怖いと感じていた。

 断定はできないけれど、アイツは……やりそうだ。



 学校に到着。希愛が背後から声を掛けてきた。



「聖くん、おはよー」

「ん、おはよう。希愛」

「昨日はありがとね」

「ああ、悩み相談ね。約束だったからな」

「おかげで勇気でたよ。これから酒井先生に断ろうと思う」

「ぜひそうしてくれ。あと……その、体を要求されても断るんだぞ! 絶対に!」


「あ、あたりまえだよ~…。これでもわたし、ガードは堅いからねッ!」


 自信満々に宣言する希愛。そうだよな、昨日のアレは俺の悪夢でしかなかった。夢幻なのだ。今なら確信をもってそう思える。

 そう、希愛は寝取られていない!


「じゃあ、頼んだぞ」

「うん。行ってくる」


 ホームルームが始まる前に希愛は、職員室へ向かった。俺もこっそりついていくる。最後まで見守るために。

 あと万が一があった場合は介入する。

 もう俺は立ち止まらない。

 希愛を守るためなら退学になってもいい。


 忍者のように後をつけていく。


 希愛は職員室に入った。

 しばらくすると酒井と共に出てきた。ジャージ姿の酒井。なんだか機嫌良さそうだな。あれか、希愛に呼び出されて期待していやがるな。


 ついていくと人気のない非常階段へ。

 そんなところに!


 扉の向こうへ行ったので、俺は扉越しに聞き耳を立てる。



『希愛、俺と付き合ってくれるのか』

『あの、先生……実は断りにきました』


『なに!? 断るだと!?』


『そうです。だってわたしには好きな人がいるんですから』

『好きな人、だと……あの聖か! クズの聖か!!』


 声を荒げる酒井。おいおい、クズとか言うな! 一応、お前の生徒だぞ。あと教師がそんな乱暴な言葉を使うなって。最低だろうが!



『聖くんを悪く言わないでください』

『……希愛。考えを改めるなら今の内だぞ』

『どういう意味ですか、それ』

『仕方ない。希愛、お前をここで犯してやる……』

『…………え』



 酒井が希愛に掴みかかろうとしていた。



 なにしやがる!!



 させるか……絶対にさせるか!!

 悪夢ではヤられちまったけど、今は“現実リアル”だ。



 寝取られる前に俺は酒井をぶっ殺す…………!

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