第5話 体の関係はなかった
お昼を告げるチャイムが鳴ったと同時に、俺は千夜を呼び出した。
生徒会室にいるとのことで向かった。
場所が分からなかったので、メッセージアプリで教えてもらった。……なるほど、三階にあるのか。
階段を上がって指定された場所へ。
……この、奥っと。
あった。【生徒会室】を発見した。
ノックして扉を開ける。そこにはすでに千夜の姿があった。
「どうしたの、ニューくん」
「千夜。確認したいことがある。中学時代に……北村という男と付き合っていたのか?」
恐る恐る聞いてみると千夜は「知らない」と短く答えた。
「刺したとも聞いた」
「誰に?」
「それは言えない。どうなんだ、千夜」
「……昔の話よ。今はどうでもいい」
なんだか怪しいな。なんとかして北村の情報を引き出したい。いったい、何者か。どうして俺から彼女を寝取るのか……。真実を知りたい。
「頼む。今度、千夜を寝取られたら俺は発狂して憤死するかもしれん」
「そ、それは困るけど……。分かった、少しだけ話す」
「おぉ!」
折れてくれたようで、千夜は北村のことを話してくれた。
「確かに付き合っていた。でも、体の関係はなかった」
「ふむ……」
「言っておくけど、私は処女だからね!」
堂々と宣言する千夜。顔を赤くし、恥ずかしそうに言っているので本当なのだろう。……安心した。
「そうか。で、北村はなぜ俺の元カノ……希愛や霜野さんを寝取ったんだ?」
「それは分からない……ていうか、疑うようで悪いけど本当のことなの?」
「本当だ。希愛は俺の部屋で北村とヤってたんだ!」
すごくショックだった。しばらくは食事も喉を通らなかった。枕を濡らす日々……。精神的にヤバくなって配信どころではなくなった。
でも、俺の中には悪魔が棲みついている。
悪くないと思ってしまった自分もいた。自信でも意味が分からないが、悪魔のせいだ。
「それはちょっと……どうなのかな」
「信じなくてもいい。でも俺は見たんだ」
「そっかぁ。ニューくん辛い思いをしていたんだね。希愛ちゃんって、確かにめちゃくちゃ可愛いよね。三年でも有名だよ」
「この狂った俺の精神を戻すためには……北村を殴るしかないと思う」
「難しいかも」
「なぜだ」
「北村くん、最近は不登校気味であんまり学校に来ないんだよね」
なんだって……?
そんなの卑怯じゃないか! まるで女の子を漁りに来ているだけみたいな、そんな野郎にしか思えない。
くそっ、どうすりゃいい。
「住所とか!」
「ごめん、北村くん……最近になって引っ越したらしいから、新しい住所は分からない」
「連絡先も?」
「もう別れちゃったからね……」
そんな、そんな! なんでそんな謎多き男なんだよ、北村ってヤツは。どうなってやがる!
なにか方法はないか。
職員室で調べる?
……ダメだ。さすがに先生たちにバレたら大問題。俺が悪者にされる。
出来る限り合法的な方法で攻めねば。
かといって三年生の教室を聞きまわるのもな……。北村に警戒され、ただでさえ不登校なのが一切来なくなる場合もある。それも困る。
希愛に聞く?
霜野さんに教えてもらう?
いや、だめだ。そんなドストレートに聞けるはずもない。それに気まずすぎる。
ちくしょう!!
どうすりゃいい!!
なにか……。
なにか方法はないのか!
誰か教えてくれ!!!
誰か……。
誰か?
「…………!」
「どうしたの、ニューくん」
「……ハハ、ハハハハ……。そうだよ」
「え?」
「俺には最強の
「まさか配信で情報を募る気なの!?」
「多少の身バレは覚悟の上だ。リアル凸されるリスクもある。だが、北村を追い詰めるためだ!! この為に俺は影響力を行使する!!」
やるしかない。俺はこれから毎晩相談も受けながら、自分のことを話す。打ち明ける。そして視聴者に解決してもらう。
これならきっと北村の弱点を知れるはず。
なんなら“悪事”を暴けるかもしれん。
そうなればヤツが不登校だろうが、一巻の終わり!!
「さすがニューくんだね! 私も応援してるよ」
「助かるよ。でも千夜、なにか情報が入ったら直ぐに教えてくれ」
「分かった。任せて」
これで少しだけ希望がもってた。未来も見えた。
北村にはない、俺にしかない才能だ。
こっちには“10万人以上”の
負けるわけがない。
俺は勝つ。絶対に勝つ。
今に見ていろ北村。お前を家から引きずり出し、悪行を晒し、必ず制裁を与えてやる――!
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