第4話 これ以上、俺の彼女を寝取られてたまるか!

 相談を解決し、俺は配信を終えた。

 そのまま寝落ちし――次の日。


 アラームが鳴り響き、俺は飛び起きた。……朝か。


 スマホを覗くと希愛と霜野さん、そして千夜からメッセージが。それに他にもたくさん。他の女子はどうでもいい。今はメインである千夜。それに、サブに降格した希愛と霜野さん。その三人だけメッセージを見る。


 ん~…?


 希愛はメッセージが20件も。

 思ったより俺のことが気になるらしい。

 昨晩の配信も見ていたようだな。感想だとかいろいろ書かれていた。


 スルー。


 さて、次は霜野さん。彼女からは『電話したい』だとか『最近冷たくない?』といろいろと不安な内容が。仕方ないさ、霜野さんは俺以外を選んでしまったのだから。


 最後に千夜。


 えっちな写真がいくつか送られていた。



 え……。



 ええッ!?



 胸元だとかヘソだとか、フトモモやら。真面目な生徒会長はどこいった……!?

 ここまで大胆だったとは。

 けどアレか。頼めばヤらせてくれそうかもな。なんてこのヘンタイ度合で思ってしまった。



 制服に着替え、学校へ向かう。

 毎日毎日だるい。

 配信している方が儲かるし、ぶっちゃけ学生をやる意味もなかった。でも、出会いの場を失ってしまう。

 それに貴重な学生時代を配信だけに注ぐのも違う。


 少しは青春がしたかった。

 だから中退することなく俺は真面目に学校へ通っていた


 幸い、あの学校には可愛い女子が多い。

 現役のアイドルやモデルもいるくらいだ。将来、声優を目指している美人もいる。そんな中で希愛と出会った。

 俺がまだ底辺配信者だった頃から見てくれていたリスナーだった。



「ねえ、どうしたの?」



 ふと気づくと俺は教室にいた。……いつの間に。考え事をしすぎて周りがまったく見えていなかった。

 声を掛けてきたのは希愛だった。



「いや、ちょっとな。そういえば、生徒会長と付き合うことにした」

「え……ウソ!」

「本当だ。凄いだろ」

「う……うん。フクザツ」


 妙な気持ちに陥っているのか、希愛は気まずそうだった。……いいぞ。そのまま俺を求めてこい。その時が“大勝利”である。


「なんだ、生徒会長と知り合いか?」

「一応ね。わたし、これでも成績は優秀だから次期生徒会長候補なんだよ。だから、一ノ瀬さんとはよく話すよ」


「そういうことね。希愛、俺と関係を戻すなら今だぞ」

「な、なに言ってんの。聖くんが距離を取ろうって言ったんじゃない」


「そうだが、このままだと俺は生徒会長……千夜と正式なカップルになるかもしれん」

「生徒会長はやめておいた方がいいと思うけど」

「なんでだよ」

「その……前に付き合っていた彼氏を刺したってウワサが」


 それを耳にして俺は脳が停止した。……彼氏を刺した? てか、彼氏いたのかよ! はじめて付き合うみたいなこと言っていたのに。

 どういうことだ!?


「詳しく教えてくれないか、希愛」

「分かった」


 聞こうとした瞬間、授業が始まってしまった。くそ、ダメか。

 あとで聞こう。



 ◆



 希愛に千夜のことを聞こうとしたが、霜野さんが駆け寄ってきた。



「ねえ、聖くん。話があるの」

「……し、霜野さん。だけど」

「どうしても話しておきたいから」

「話ってなにさ」


「北村先輩のことなんだけど…………」


「は?」



 いきなりその名を出され、俺はびっくりした。そいつは、俺から希愛と霜野さんを寝取った男! まさか霜野さんからその名前が出るとはな。



「ごめん。いきなりで」

「どういうことだい」

「この前、教室でシしてたの……見てたよね」


「……! まあね。俺の存在に気づいていたのか」

「うん。本当にごめんなさい。でも、実は私……北村先輩と付き合っていたの……」

「なんだって!?」


「で、私のことはもうでもいいんだけどさ……。聖くん、生徒会長と付き合い始めた?」

「え……。知っていたのか」

「もう噂になってるもん」



 くそう、さすがに俺が有名人であり、相手が生徒会長ということもあって広まるのが早いな。


「それで何が言いたい」

「その生徒会長の……一ノ瀬 千夜さんなんだけど……」

「?」


「彼女は……北村先輩と……」



 まさか。


 まさか。



 希愛が言おうとしていた彼氏って……。



「……お、おい」

「ううん。違うの。中学校の頃に付き合っていたんだって」

「マジ?」

「うん。でね、なんかあって北村先輩を刺しちゃったんだって」



 なるほど、そう繋がるわけか。中学時代に千夜と北村というヤツは付き合っていたと……。

 くそう、あの男はいったい何なんだ。

 北村のことを探ってみるか……。


 いや、でも待てよ。


 千夜を裏切ったら、俺が刺されるんじゃ……。急に怖くなってきた。とんでもない人と付き合ってしまったかもしれないな。



「分かった。ありがとう。一度探ってみる」

「気をつけてね。あと、私のことは……気にしないで」

「そうだな、悪いけど霜野さんとはこれっきりだ」

「でも、友達だよ」

「こっちとしてもその方がいいな」



 握手を交わし、俺は千夜を探す。

 彼女に聞かなければ……北村の野郎のことを!


 これ以上、俺の彼女を寝取られてたまるか!

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