024
随分歩いた。歩かされた。そして見た。見させられた。この国の現状を。
道路や排水溝などのインフラが壊滅的で補修も儘ならない。出来る奴がいない。国民の家も同じような状態、城に至っては先述の通りだ。外部から指導者を連れてくればいいのだろうが、龍国はほぼ鎖国状態。入る事は叶わないし、自分達よりも下との認識である他種族に頼る事など、プライドが許さない
それでも、協力を求めて外に出た仲間は討伐されたり、崇め奉れたりで帰って来ない。
ではゆっくりと話をしようと城に呼ばれて入ったのはいいが……
「中身もボロボロかよ……」
石造りの城故に頑丈ではあるが、崩れたところはそのまま、いや、補修を試みた跡はあるが、子供騙しにもなっていない、やらない方が良いレベル。そしてだ。
「何で床が下がってんだ?」
傾斜なんてレベルじゃない、文字通り崩落しているのだ。見ようによっては壇上に見えるが、そんないいもんじゃない事は確かだ。
「いつだったか、部下が喧嘩したらそうなったらしい」
玉座に座りながら言うアンナ。陥没させるほどの喧嘩を容認すんじゃねーよ。俺の店でそれやったら間違いなくぶち殺すけど。
「どうしたのだカイト君?座るがいい」
「座れって、この椅子か?脚が一脚折れそうなんだが……」
「片方に体重を掛けて座るのだ。ちょっとしたコツが必要だが、カイト君ならば造作もあるまい」
客に座らせる椅子じゃねー事は確かだな。少し呆れて、いや、かなり呆れて溜息をついた。
「いいよ、自分の椅子は自分で用意する」
「用意と言っても、椅子は全部そんなものだぞ?これでも比較的マシな椅子を用意させたつもりだ。カイト君は大事なお客だからな」
胸を張って得意気に言うが、客に座らせる椅子じゃねーっつってんだよ。
了承を得る事なく、椅子を分解。原子が宙にさらさらと舞う。
「破壊しているのか…?いや、これは……」
答える事もなく、構築。椅子の脚はあっという間に元通りとなった。
「なんと!あの一瞬で直したのか!!私様の腕も一瞬で治したもんな!!椅子の脚程度は造作もないと言う事か!!」
「いいから、落ち着いてよーく聞け。お前等の国のインフラや建物な、一から作った方がマシだ。と言うかそっちの方が早い。補修、修繕のレベルじゃねーよ」
「それは私様もそう考えておる。いい加減雨漏りで惨めな思いをしたくない」
雨漏りまですんのかこの城は……防御力が全く無さそうな城だな……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます