021
「うん?最低一年に一度使っているって事は、この国にも罪人が出るって事か?」
あそこは紛れもなく牢屋だった。龍国に来る手段は無いに等しいので、部外者が不法侵入するとは思えない。つまり、身内から犯罪者が出るのか?
「いや、牢の他に保管庫としての役割もあるのだ。あの牢は通年通して一定の温度を保っているからな。食料の備蓄庫にはもってこいなのだ」
成程……備蓄庫か……流石にこんな強国とは言え農業くらいはやっているだろうしな。
「だったらお前等の畑ってあの牢屋の近くなのか?」
「いや?真逆の方角だ。畑からここに普通に歩いて来るだけで三日は使うか」
「畑の近くに作れよ備蓄庫!!!」
それか城の地下にでもストックしとけよ!!わざわざ三日かけて収穫物を運ぶとか手間だろうが!!
「あ、それとも、丁度いい温度になるのがあそこの地下牢って事なのか?」
「そんな事はない、事実、城の地下にも備蓄はしている」
城の備蓄庫にストックしきれない分はそこに持って行くのか?だったらやっぱもうちょっと近くに作れよ!
「そこも我が国の問題の一つ。カイト君を喚ぶに至った理由だ」
???である。備蓄庫なんか地下室作ればいいだけだと思うが、違うのか?
「先程も言ったが、ここも元は城だと」
頷く。そう聞いたし。
「では、現在の城はどこだろうな?」
「え?移転したんじゃねーのか?」
なんかの理由でここを放棄したんだろ?
「では、ここから出てみようか」
そう言って石造りの半壊した門から踏み出した。
「……まさかのお隣かよ。使っていないと言ったからてっきり引っ越した物かと………」
「逆に引っ越せるのならば引っ越したいのだ。あの城をよく見ろ」
よく見るも何も…想像よりも小さい城だな、としか……うん?
「なんか半壊しているような?」
ところどころひび割れて、場合によっては穴も開いている。流石に塞いでいるようだが、陳腐過ぎてもろ解りだ。それだけじゃない。若干傾いているような?
「先程の牢の上は立派な城だったそうだ。あの現在の城と連なって、巨大で高い、塔のような城。しかし、その最盛期と比べて、今の城は十分の一にも満たないほどの大きさとなった」
「え?そうなのか?なんでだ?」
「……職人がいないからだ。昔、昔には沢山いた職人は寿命を経て他界してもういない。残った者で見様見真似で修繕を繰り返し、解体して材料を得てそれを使う……こうして、今の城の規模となった」
作れる奴がいない!?三千年近くも!?そうなる前に何とかしなくちゃと思わなかったのかこいつ等!?
「時々地上に出て職人を捜す事もあるが、何故か解らぬが、出て行った者は皆勇者を導く存在となったり、討伐対象にされたり……」
地上に出てきた理由が職人捜しなの!?伝承では確かに導いたり討伐されたりとの事だったが、真実が切実過ぎるんだけど!!
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