018

 しかし、ポカンはいいが、いつまでも確認できないのは困る。


「おい、動かしてみろっつってんだ」


「え?あ、ああ……」


 恐る恐る右腕を動かした。グーパーしたり、何度も肩を回したり。


「……完璧に治っているな……」


「そうか、良かった。お前あんま無茶すんなよ。マジぶち殺す所だったじゃねーか。殺すのはあのジジィだけなんだよ」


 ピンク髪も治した事だし、改めてジジィに向かう俺だが……


「待てと言っておろう!爺!お前もだ!!」


 焦ったピンク髪が再び間に割って入った。


「……もう良い…ワシの負けだ。済まなかったなクソガキ」


 クソガキと言いながらも頭は下げた。暴言と捉えてぶっ叩いてもいいが、まあいいか。


「ふん、少し不満だが我慢してやる。寛大な俺に感謝しとけよジジィ」


「貴様に感謝などするか。するのならばアンナ様じゃ」


 そう言ってピンク髪を見るジジィ。そして俺にした謝罪よりも深く頭を下げた。


「……アンナ様のおかげでワシの命は損なわれずに済みました。なんと礼を言っていいのか……」


「良い!私様は実に寛大だからな!はあっはっははっは!!!!」


 腰に腕を当てて、胸を張っての高笑いであった。まあ、ジジィ的にこのピンク髪が庇ってくれたから死ななかった訳で、あながち間違いじゃない。


「しかし貴様よ、まさか究極回復アルテミット・ヒールを持っているとは予想外だったぞ。あの術を使える術者は少なくとも私様の記憶には無い」


「お前の腕を治したアレか?あれは究極回復アルテミットヒールじゃねーよ。そもそも少ないんじゃなくて一人しかいねーよ。そして究極回復アルテミット・ヒールを持っている奴なら知っている」


「なんと!究極回復アルテミット・ヒールではない!?欠損部分も完全に蘇る術と聞いたからそれだと思ったが!それに、本当の術者を知っていると!?」


「ああ、冥王だよ。冥王ルシフ・プルトエル」


 母ちゃんから継いだ術だ。俺も実際に使っている所は見た事はないが、受け渡しの状況は見ていたし。


「冥王……貴様の主人の一人、だな…だが、私様は主人になれなかった……」


 悔しそうに顔を歪ませる。それでいいんだよ。三人も主人はいらねーんだよ。二人でもお腹いっぱいなのに。


「それに、貴様とか呼ぶんじゃねーよ。相沢 凱斗だ。カタカナでカイトでもいいぞ。一応天界ユピテエルと冥界のナンバーツーなんだから。地上では領主扱いなんだし」


「そうか!ならば私様の事もアンナ!と呼ぶ事を許そう!!カタカナで呼ぶが良い!!」


 お前カタカナ知らねーだろうが!!つかカタカナ呼びしかできねーだろ!!漢字なんかもっと知らなさそうだし!!

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