017

 まあ、そんな事はどうでもいいや。


「おうお前等。俺は無理やり拉致されてこの国に来た。そして目覚めたら牢の中だ。その上、このジジィに喧嘩売られたんだ。仕返しは当たり前で、これで済ます気も毛頭ない。しかしながら、ここで退くと言うのなら命だけは助けてやる。退かんのならぶち殺す。どっちだ?」


「だからやめよ!!爺の非礼は私様が謝罪しよう!!ただでさえ少ない民をこれ以上少なくしないでくれ!!」


 まさに懇願の顔になって。つうか、少ない民って?


 なんかのっぴきならない事情があるようだな……だが、それに考慮する義理は……あるか。


 魔王因子サタン・ファクターを渡さなきゃいけない事情があったから、寧ろ拉致は渡りに船だったからな。


「じゃあ、まあ、その兵隊たちは許してやる。ジジィの命は貰うが」


「やってみよと言っておろうがクソガキ!!」


 お望み通り、ぶち殺してやるよ!!ぶっ飛びやがれ、と、強烈に念じた。


 分解はジジィを木っ端みじんに……せず!!


 なんと!ピンク髪が間に強引に入って分解を右手で受け止めた!!


 物質ならば分解可能。龍族だろうが、物質には違いない。当然、その右腕は肘の辺りからぶっ飛び、肉片が辺りに散らばった!!


「ぐ!!」


 慌ててキャンセルしたが、分解は肩までその影響を及ぼして、右肩の骨が露出する!!


「何やってんだお前!!つうか、ぐ!で終わるような痛みじゃねーだろうが!!」


 慌てて構築を施そうとするが――


「アンナ様!?アンナ様の右腕が!!クソガキが!生きてこの国を出られると思うな!!」


 ジジィに触発されたって訳じゃないだろうが、流石に兵士たちの殺気も半端じゃなくなって、いつでも俺に襲い掛かって来てもおかしくはない状況だった。


「邪魔すんな!!間に合わなくなる!退け!!」


 立ち塞がった兵士をぶっ飛ばしてピンク髪に駆け寄る。


「大袈裟な……たかが右腕を失った程度だ」


「アホか!!大量出血でくたばる可能性がデカいだろ!!ちょっとじっとしとけ!!」


 脂汗を流しながらも、笑いながらやせ我慢をするピンク髪。龍の国のトップと言うだけはある。民を守ろうとするその姿勢、俺的に好感度が爆上がりだった。


 ともあれ、構築で失った右腕を復元。あっという間に元に戻ったぜ!


「ふう……これで大丈夫だな……ちょっと動かしてみろ。確認したいから」


 額の汗を大袈裟に拭って促すも、動きはしない。つうかポカンと固まっている。ピンク髪だけじゃない、ジジィも兵士たちも。

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