015

 ジジィ、怪訝な顔でピンク髪を見た。


「アンナ様のお望みはインフラを復旧できる技巧奴隷では……?古しく、倒壊寸前の建物を直せる技術を持った者なのではないのですか…?」


 そんなもんも直せないのか?職人とかいねーの龍国ってのは?


「無論、それもそうだが、その程度ならば人間界から出来る者を攫って来れば済む話」


「俺も攫われたんだが……」


 気付いたら檻の中だよ?攫ったよなお前?


「……あとは…世継ぎ、でしたか?」


「うむ。だが、ただの人間の男と交わる気は毛頭ない。私様の価値はそんなに低くは無いのだ!」


 なんか大きな胸を張ってドヤ顔で答えるが……


「なんだっつうんだ?お前みたいな美人さんなら、芸術性がある腕のいい職人でも、伝説級の武器を持つ勇者でも簡単に捕まえられるだろーが?」


「うむうむ!その通り!!私様程の美貌ならばその程度の男・・・・・・ならば簡単に篭絡できよう!!」


 胸のそりがヤバくなった、逆ブリッジみたいになっていた。どんだけ自信過剰なんだこいつは?


 だが、その程度の男・・・・・・


「私様が欲したのは、賢過ぎる程賢く、強すぎる程強く、そして、私様好みの顔を持つ男!!」


 バーン!と、俺に力強く指を差す。


「…………あ、いやいや…あの、俺って言う程賢くはないが……」


 学校の成績も下から数えた方が早いくらいだったし……


「そんな事はない!貴様は私様が知らぬ世界の事を知っている!それこそ、建物の復旧方法!生活インフラの向上!」


 そ、そうかもしれないが、実際俺は成績が悪くてだ……セレスが言うには、一度見た物の記憶が忘却されようが、残っているので単純に掘り起こしているだけだ、と言っていたが……要するに、グーグルさんとか何かの本で読んだものを、忘れていると思っているだけで、記憶の奥底には残っているから……


「ま、まあ、強すぎる程強すぎるのは間違っちゃいないけど……」


「そうであろう!私様が欲する強さとは、世界を全部敵に回しても勝利できる強さ!よって爺や龍戦士ドラグーンが束になって向かって来ようが瞬殺である、と言う事だ!!」


 そんなでたらめな強さを求めたのかこいつ!?そんな奴いねーだろ!!常識的に!!


「アンナ様……召喚は失敗したのです。そのふざけた人間は多少やるようですが、流石に全世界を敵に回しても勝利出来るとは思えません。その条件に満たされないのですから失敗なのでしょう」


 今度ばかりはジジィに同意する。欲が深くて存在しない男を欲したがいなかったので失敗した。すんごいしっくりくるし。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る