003

「あ~…腹へった~…忙しすぎるだろ、全くよ……」


「ホントにな……もっと使える奴が欲しいもんだぜ……」


 ぼやきながらジンとライオン丸、来店。もうそんな時間かよ。


「らっしゃい。エビワンタンと肉ワンタンか?」


「お~う……大盛りで頼むぜ……って、海王様!?」


 テーブル席に座る直前、メデアを発見してビーン、と起立し直すジンとライオン丸。


「こんにちはぁ~。別に緊張する事はありませんよぉ~。ここにいる時は私もラーメンを食べに来たお客なんですからぁ~」


 コロコロ笑いながら言うメデア。全くその通り。ここは俺の城。俺のルールでは偉い奴だろうが貧乏人だろうが、ラーメン食いに来た客はみんな同じだ。


「は、はい…そう言われてもな……」


「いいから座れ。お前等が来たって頃は昼時だろ?って事は、席なんかすぐ埋まる」


 それもその通りだと恐縮しながら席に着く。そしてお冷で喉を潤し、言った。


「まいったな……海王様と同じ時間とか……」


「ああ……緊張してラーメンが喉を通らねぇかも……」


「嘘つけ。お前等誰が同席でも普通に食ってるじゃねーか」


 まあ、そうだけどと更にお冷を流し込んだ。と、再び来店を告げる鐘の音。


「らっしゃい。今日は早いな?」


 それは中央地区の団地を請け負っている蜥蜴人間リザードマン一行だった。前回の旧ルノワールから募集で連れてきた奴等だ。


「はい。今日は丁度キリが良かったもので、監督から昼取って来いと言われまして……海王様、こんにちは」


 10名くらいの蜥蜴人間リザードマンがメデアに辞儀をする。真ん中のリーダーみたいな奴が率先して行っているので倣っている感じだ。因みに、こいつは前回、他の連中よりも二回り身体がデカく、傷だらけの蜥蜴人間リザードマン、ワイズ・コモドだ。旧ルノワールでは超恐れられた荒くれ者のようだが、身内からは勇敢なる者と称されて尊敬されている。らしい。


「こんにちは~。あなたも毎日来ていますねぇ?お昼、用意されたご飯がある筈でしょうにぃ~」


 飯場も勿論支度してある。こいつ等の口に合う料理も当然ある。こいつ等と同じ種族が用意した飯なので、口に合わない筈はない。


 なのに、ワイズは毎日来ている。他の連中は来たり来なかったりだが、ワイズだけは毎日来ている。


「はい、うまいですから。カイトさんの飯は」


 うんうん頷くメデアとルル。全く以てその通りだと同意の頷きだろうが、若干照れている俺がいる。

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