第24話
わたしの制服を貸した日から野々宮くんはうちに遊びにくることが増えた。一緒にメイクをしたり、かわいい服を着たり、寝転んでファッション雑誌を読んだりしている。
あとは映画を見たり、ゲームをしたり。お母さんも野々宮くんを夕食に誘っている。
女の子の格好をしている野々宮くんに、お母さんも最初は驚いていたけど、野々宮くんがわたしにいじわるをすることもなく、いつも電車に一緒に乗ってくれていて、おしゃれを教えてくれた人だと説明したら、安心していた。
だけど、野々宮くんは初めてうちのお母さんに会ったときのことを、まだ少し気にしているみたいだ。
女の子の格好をしている自分はおかしくないかと尋ねてくることが増えた。
*
「野々宮くん、明日って時間あるかな」
金曜日の放課後に電車の中でいつものように話す。
「なんで? なんか用事?」
「明日から、アニメ映画のコラボカフェが始まるの。よかったら……って思って」
「いいよ。つーか、つばさから誘ってくれるなんて珍しいじゃん」
「だって、友だちは野々宮くんしかいないから……」
コラボカフェでは、劇中で実際に出た食事が再現されていたり、オリジナルのグッズも販売されていたりする。どうしても行きたかった。
ひとりで行く勇気はなく、かといって親と行くのも気が引ける。誘えそうなのは野々宮くんしか思いつかなかった。と、話したら、野々宮くんは腕を組んで呆れたように笑った。
「消去法ってことかい」
「そ、そんなわけじゃ……」
「冗談。俺もあのアニメ好きだし、楽しめそう。ちょうどバイトも休みだし、心ゆくまで付き合う」
翌日、わたしは念入りにメイクをして出かけた。現地集合にして、野々宮くんが来るのを待っていた。スマートフォンでコラボメニューを見ては、口元が緩む。
お待たせ、と眠そうな声がして、わたしは顔を上げる。えっ、と思わず声が漏れた。
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