第19話
買い物を終えてからハンバーガー店に入り、わたしたちはふたりともMサイズのコーラとてりやきバーガーを注文した。
わたしはいつもチーズバーガーを注文するけれど、野々宮くんがてりやきバーガーを頼んでいるのを見て、食べてみたくなった。
「はあ。買い物すっげえ楽しかった。あとで化粧させて。買ったやつ試したい」
「うん。お願いします。野々宮くんみたいに、わたしもなれるかな。ちょっとでもかわいくなる?」
「かわいくするよ。つーか……本物の女の子には、俺はどうあがいたって敵わねえよ」
野々宮くんはポテトをひとつつまんで、窓の外を見た。視線の先には三人組の女の子たちがいて、みんなそれぞれにかわいい。
ふわふわの髪の毛に華奢な体型。確かに野々宮くんにはないものだけど、あの子たちより野々宮くんのほうが絶対にかわいい。
「野々宮くんは、かわいい。わたしはそう思う。絶対、かわいい」
「……そんな強い口調で言わんでもわかってる」
野々宮くんは優しく目尻を下げる。普段の得意げな笑い方でもなく、静かな笑い方でもない、初めて見る笑い方だった。思わずポテトを運ぶ手が止まり、目が離せなくなる。
今日の野々宮くんの指先はくすんだ青色だった。今はこういう少し灰色がかった色が流行っているのだと、野々宮くんがドラッグストアで教えてくれた。
わたしはこの前のピンク色のほうが好きだけど、これはこれで野々宮くんに似合っている。
「今日は堂々と化粧品見れた気がする」
「いつも堂々としてないの?」
野々宮くんはいつも堂々としているイメージがあったので意外だ。
「そりゃあな。こんな格好してたって、やっぱり男だもん。なんだこいつ、って視線をすごく感じる。けど、女の子といると不自然じゃなくなるというか。ああ、ごめん。七瀬さんのこと、隠れ蓑にしてるとかじゃないから」
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