第18話

「七瀬さんは胸が目立つのが嫌で、だぼだぼの服ばかり着てるんだろ。だけどそれって、かえって太って見えるし、もっさりする」

「なるほど」

「ボタンのついた服は避けて、伸縮性の少ないものを着たほうがいい。んで、首周りをすっきりさせて抜け感を出すことで、胸が目立たなくなる」


 なんだかよくわからないけど、今日は野々宮くんの言うことを聞いたほうがいいと思うので、とりあえず頷いておく。


 ファストファッションの店にはぎっしりと服が詰まっている。こんなにたくさんの中から、わたしが着られる服を見つけるのかと思うと、途方に暮れる。

 野々宮くんが持ってきた服を見て、目が飛び出た。


「あの、肩が結構開いてない?」

「いつも着てるクソダサシャツよりは開いてるかもね。ボートネックだから胸元は開かない。試着しといで」


 とりあえず言われるがまま試着してみる。パンツの中にシャツを入れろと言われ、中学時代のことがよみがえった。


 溜息をつきながら全部入れたら、ちょっとたるませろと言われた。野々宮くんは注文が多い。

 鏡を見ると、思っていたより胸が目立たない。胸の前に垂らしていた髪の毛を背中に流してみたけど、問題なさそうだ。


「胸周りは少し余裕を持たせる。そうすれば目立たないから。で、腰のあたりにメリハリをつければ、太って見えない」


 野々宮先生のファッション指導を聞き流しながら、わたしは鏡の中の自分をぼんやりと見ていた。ただ、普通の服を着ているだけのことなのに、じんわりと目の奥が熱くなった。


 お小遣いの許す範囲で何枚か服を買い、ドラッグストアに移動した。きらきらした化粧品の陳列棚を野々宮くんが凝視して、いろいろと試す。


 ここでもいろいろとうんちくを言っていたけど、わたしにはちんぷんかんだ。この言葉の意味がわかるようになれば、野々宮くんみたいにかわいくなれるのだろうか。いや、それは違う気がする。

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