第17話

 試験を終えた週の日曜日、わたしと野々宮くんは清々しい気持ちで買い物にやってきた。

 ひとまず平均点はすべて超えていた。特に数学の点数がよかったのは、野々宮くんのおかげかもしれない。


 いっぽう野々宮くんは、試験の結果についてあまり触れられたくなさそうだった。

 それにも関わらず今日の野々宮くんは、とても機嫌がいい。


 黒髪の長いウィッグをつけて、真っ青なワンピースを着ていた。袖がふんわりしていてお姫様みたいだと伝えたら、頭が高いわ、とノリノリで返してきた。

 野々宮くんはもっとクールで、教室の隅で静かに佇んでいるイメージだったけど、実はこんなにお調子者だったとは。


「七瀬さんに似合う服とか髪とかメイクとかめちゃくちゃ考えてきた。俺の知識をフルで披露できる日が来るとは、ふふふ」

「…………今日はよろしくお願いします」


 今日はお化粧品と洋服を買うそうだ。あまりこれまで興味を持つことはなかったけど、というより、わたしがおしゃれを頑張ったってなんの価値もないと思っていた。


 だけど、おしゃれな野々宮くんの隣に立つ以上、変な格好はできない。

 野々宮くんは女の子になりたいと言うだけあって、女の子をよく研究している。


 女の子になりたい、なんて聞いたときは驚いたけど、野々宮くんならなってしまうと思う。見た目がかわいいだけでなく、どうしたらきれいになれるかをよく勉強しているし、その頑張りが彼を輝かせるのだ。


 だけど、女の子ってそもそもなんだろう。

 わたしは野々宮くんみたいにきらきらしていないけど、分類上は女の子のはずだ。身体の形だけの話なら、やっぱり野々宮くんの願いは叶わないのかもしれない。

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