第7話
「いや、あんたは落ちこまなくていいんだって。なーんも悪くないんだから背筋伸ばせよ。それより、大丈夫? これから」
「……あ、はい。でも今日は帰ります。親に迎えにきてもらいます」
また電車に乗れない日々が続くのだろうか。お父さんとお母さんに迷惑をかけて、わたし本当にどうしようもない。
この美しい人だって、きっと予定があっただろうに迷惑をかけた。
「あのさ、しばらくは一緒に登下校しない? 路線、同じだし。いつもあんたが同じ電車に乗ってるの、実は知ってた。でも痴漢にあってんのは知らなかった。ひとりより、ふたりのほうが安全だと思うし、なんというか……今までの償いというか……」
ひとりで電車に乗るのは怖いので、だれかが一緒にいてくれると心強いから、その申し出はすごくありがたい。
だけど、この人はなにを言っているのだろう。償いとかなんとか言ったような。
わたしが返事に困っていると、美しい子はああもう、と頭をかきながらつぶやいた。
「とーにーかーく! 月曜日からは俺が一緒だから! いいね?」
美しい子の勢いに押されて、わたしはこくこくと頷いた。
*
そして来る月曜日。あの美しい子はいったいなんだったのだろうと考えながら駅へ向かう。
わたしがいつも電車に乗っているのを知っていたと話していたけど、残念ながらわたしのほうはまったく面識がない。あんなにかわいい子なら目立つはずなのに。
「おはよ」
考えごとをしながら歩いていたら、突然声をかけられた。足元から目線を上げた瞬間に、わたしはひっと息を呑む。
野々宮くんが腕を組んで、むすっとした顔で立っている。朝からとんでもない人に会ってしまったなあと、嫌な汗をかいた。
「な……なぜここに?」
「はあ? 覚えてねえのかよ。たった二日前のことだろうが。しばらく一緒に登下校って言っただろ」
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