そんなことより『負けヒロイン』は面白い!
その日、科学部の部室は沈黙に包まれていた。
「……」
「……」
十分後――。
「……なにか言ったらどうだ、ジョシュよ」
「……いや、なんて声を掛けていいのか分からなくて……」
「同情か? 同情なのか? はっきり言ったらどうりゅ! 私の会心の力作『今さら後輩男子から溺愛されても、もう遅い!』のPVが1(9月21日現在)しかちゅあかにゃかったことにゃろえをッ!」
ああ、またハカセが怒りでご乱心あそばせ頭がバグってしまった。ていうか会心の力作だったのか、アレが……。まあ、力を入れた小説ほど得てしてそんなもんだけど。
「で、でも初日に栞を付けてくれた方もいますし、今は俺の書いた小説より栞もPVを多いですよ。そもそもこのエッセイを読んでないと分からない小ネタも含まれてましたしですしですし」
「……そ、そうか?」
「ええ、そうです。ちゃんと評価されていますよ、ハカセの小説は」
「やっぱりそうか。まあ、人を選ぶ内容だったからな。分かる人間にしか分からんだろう」
チョロ……。
しかしハカセは自信を取り戻したようだ。あのままでは非常に面倒くさい。
「そんなことよりハカセ、なんですかこの【二話完結】ってキャッチコピーは、全然言っていることとやっていることが違うじゃないですか! まさかハカセ、日和ったんじゃないでしょうね?」
「ッ!? ピヨってなんてないもん!」
「あーあぁ~、いますよねぇ。普段は偉そうに講釈垂れてるクセに、いざ自分の番になると急に大人しくなっちゃう人って」
「うるしゃいうるしゃいうるしゃいうるしゃい!! そんなことよりジョジュ、約束通り、初日に5PV越えなかったからなんでも言うことを聞いてやる!」
「ふーん、本当にいいんですか?」
「ああ! ハカセに二言はない!」
「エッチな要求でも?」
「な、なに!? き、きちゃま、私に興味がなかったんにゃないにょか??」
「ああ、あれは嘘です」
「うそッ!?」
「ええ、実は俺はゴリゴリのロリコンなんです。幼児体形が三度の飯より好きなんです。ぶっちゃけハカセのワガママボディがたまらないんです」
まあ、こっちが本当の嘘だけどね。
「な、なにゅ!?」
ハカセの顔が真っ赤に染まる。オーバーヒート一歩手前だ。
「ですが、エッチな行為はやめておきます。R18指定になってしまうので」
「そ、そ、そそそ、そうか! こ、この意気地なしめ!」
無理しちゃって……。そこがハカセの可愛いところなんだけどね。とりあえず元気になって良かった。
「ていうか、なんていうか皆さんエッチなフレーズには敏感で色々とご指摘をいただきますけど、銃で頭を撃ったりしていることに関してはなんのツッコミがないのはなぜでしょうか? ヘッドショットなんて絶対にR18指定ですよね」
「うーむ、日本は銃社会じゃないからな。ヘッドショットといってもピンとこないのだろう」
「そんなもんでしょうか?」
「そんなもんなの! さあ、ジョシュよ。今度は100PVを目指してもっと面白い小説を書くのだ!」
「えーと、ここは文芸部じゃなくて科学部なんですけど……」
「そんなことより『負けヒロイン』は面白いな! ハカセの推しはコマリだぞ!」
……体形が似ているからかな?
「なにか言ったか?」
ハカセちゃんとジョシュのラノベ虎の巻 @soraruri
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