読まれない小説を読ませる小説に変えるメソッド2
「はうっ!?」
俺は意識を取り戻した。
確か……、ハカセに額を撃たれて死んだはず……。
「起きたか」ハカセは言った。
「ハカセ……、俺はいったい……」
「一か月も寝ていたんだ、混乱するのは無理もない。だが心配するな、吹っ飛んだ脳みそは実験用のメダカの脳で代用したから問題ない」
「そうですか、良かった。ていうか一か月も寝ていたなんて……、留年したらどうしよう」
「それも心配ない。工事現場の交通整理ロボットをお前の席に配置しておいたから誰も気付いていない」
「気付かれていないことに傷つきましたけどね」
「さて、前回の続きをしよう」
「前回の続き?」
「お前の陳腐な小説をどうしたら多くの読者に読んでもらえるかだ」
「あ、ああ……、そんな話してましたね。前回は確かバンドワゴン効果でしたっけ? ステマするにしても協力者がいないと、どうにもならないって結論で終わりましたよね」
「うむ、そうだ。だから私は別の方法を考えてやったぞ」
「おお、さすがハカセ! で、その方法とは?」
「ザイオンス効果だ」
「また心理効果ですか? 発明品でなんとかしてくださいよ」
「それは道徳に反する」
「ヘッドショットは道徳に反しているのでは?」
「うるさい、とにかくザイオンス効果だ」
「なんかカッコイイ名前ですね。で、どういう心理効果なんですか?」
「これは何度も繰り返して見聞きすることによって好感度が上がるというものだ。単純接触効果ともいう」
「それをどう活用するんですか?」
「つまりだ、小説を投稿する時間はランダムにしないで、いつも決まった時間に投稿するんだ。そうすることによって、最初は興味がなくスルーしていた人たちの目に何度も止まり、次第に興味を持つようになってお前の小説を見てくれるはずだ」
「なるほど、同じ時間なら同一人物が小説投稿サイトを開いている可能性が高いってことですね」
「理解が早いな、頭を撃ち抜いてよかった。メダカの脳で脳みそがチューンナップしたようだ。もちろん球数がたくさんあるなら気にする必要はないが、残弾が少ないなら決まった時間に投稿した方がいいだろう」
「はい、さっそくやってみます!」
俺はパソコンを開いて電源を入れた。
「ハ、ハカセ、大変です!」
「どうしたジョシュよ」
「何者かが俺のアカウントで小説を書いた痕跡があります! しかもひどい駄作の香ばしい匂いがします! なんだこれ? 『今さら後輩男子から溺愛されても、もう遅い』ですって! タイトルからしてセンスなさすぎなんですけど! 冗談でしょwww プークスクス!」
俺の背後でガチャリと銃のスライドが引かれた音が木霊した。
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