ハカセちゃんとジョシュのラノベ虎の巻

@soraruri

読まれない小説を読んでもらうメソッド1

登場人物

 ハカセちゃん(♀) 13歳のJK2

 ジョシュ(♂) 16歳のDK1


「辛気臭い顔してどうしたんだ、ジョシュよ」


 部室にやってきたハカセは、俺の顔を見るなりそう言った。


「俺の書いた小説が全然読まれないですよ」


「ショジュよ、お前、小説なんて書いていたのか?」


「はい、実は小説家を目指しているんです」


「ふーん……。ていうかここは科学部なんだけど、文芸部じゃないんだけど?」


「そんなことは分かっていますよ」


「?」

「?」


「ま、まあいいか。息抜きも必要だろう……。(って、そういえばこいつ部室にいるときはいつもキーボードを叩いていたな)」


「もっと俺の小説を多くの人に読んでもらいたいんです。なのでハカセ、ビューンてPVが伸びて評価がたくさんもらえる発明品を作ってください」


「ふむ……、作れなくもないが、もっと簡単に小説を読んでもらえる方法を教えてやろう」


「え!? そんな方法があるんですか!」


「ああ、心理学を利用すればお前の稚拙で矮小で卑猥な物語でもあっという間に大人気になれる」


「お、俺の稚拙で矮小で卑猥な物語が大人気になってランキングトップに!? お、教えてください!!」


「ただし、教えてやるが条件がある」


「え、なんですか? また足の指を舐めろって言うんですか? まあ、ちゃんと洗ってからならいいですけど……」


「ば、ばばば、バカモン! そ、そんなことを言った覚えはないぞ!」


「そうでしたっけ? なんでもしますから早く教えてください」


「お、お前は躊躇がないというか潔い良いというか……」


「それで『小説を読んでもらえる方法』とは?」


「それはな……」


「そ、それは?」


「バンドワゴン効果だ」


「バンドワゴン効果? なんですかそれ?」


「ふむ、例えばお前がラーメンを食べたくなってネットで近所のラーメン屋を検索したとする」


「ふむふむ」


「ネットで二件のラーメン屋がヒットしたが、店主はどちらも同じ師匠の元で修行を積んだ者であり、家からの距離が同じで、値段も同じ、空席状況も同じだったとしよう」


「ふむふむ」


「ラーメン屋Aは好評価の口コミがゼロ件だったのに対して、ラーメン屋Bは十件だった。さて、お前はどっちに行く?」


「そりゃ、ラーメン屋Bですよ。同じ値段で待ち時間も同じなら美味しいと評判の方がいいです」


「それがバンドワゴン効果だ。実際のラーメンの味に関わらず人間は心理的に多くの人が支持している方を選んでしまうのだ」


「つまり、どうすればいいですか?」


「バカか、お前は。つまりたくさんの人にお前の小説に好意的な口コミを書いてもらえばいいのだ」


「……ふぅ」


「どうしたジョシュよ?」


「ハカセ、それができれば苦労しないんですよ。まったくこれだから素人は……、はぁ」


「なんだと!?」


「だって俺にリアルとネット合わせて何人の友達がいると思っているんですか? 二、三人じゃ効果ないですよ、一瞬で消え去っちゃいます」


「ならば私が協力してやるぞ! 私の知人をすべて動員すれば!!」


「無理しないでください。俺、ハカセがクラスでボッチなの知ってますから。知人って、ただ知っているだけで実際にハカセと交友のある人なんていないでしょ? ケータイの連絡先だって公的機関で件数の水増ししているじゃないですか」


「……ジョシュよ。お前は触れてはならない事象に触れてしまったな」


 そう言ってスクールバックからデザートイーグルを取り出したハカセは銃口を俺の頭部に向けた。


 銃声が鳴り響き、俺の視界は暗転する。


「さて、ラーメンでも食べにいくか」


 途切れる意識の中で、ハカセの声が聞こえてきた。





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