CASE1

File1 放課後


朝。純の通う成山なりやま大学附属成山小学校の1年1組では今、あることが話題になっていた。

「ねえ、犯人わかった?」

純が自分の席で読者していると、クラスメイトの美川優奈みかわゆうな岡田翔太おかたしょうたが話しかけて来た。

「まだ、だけど」

「そうなの?私、絶対あの人だと思うな」

「おれもそう思う」

このクラスで話題になっている推理小説の話だった。

「早く10巻出ないかな」

「えっ!?優奈、もう9巻読み終わったの?」

翔太が驚いた。

「うん」

「へえ。ふたりとも、そんなに推理小説が好きならウチくる?」

「「え?」」

2人は純の言葉に驚いた。

「一緒に住んでるヤツが推理小説好きでさ。いっぱいあるよ。昔のやつとかも」

「マジで⁉︎ 行きたい!」

「なら、放課後くる?」

「いいよ」


###


放課後。

優奈と翔太は純の家に来た。

「茂木探偵事務所?ここ、純君のお家なの?」

「そうだよ。」

「え、純の家族、探偵なの?それに、みょうじ、高橋じゃなかった?」

「まあね。」

「じゃあ、誰が探偵なの?」

「探偵は親戚だよ。ニュースとかで見たことあると思うけど・・・」

「あ!あの人でしょ?名前忘れちゃった」

優奈が言う。

「そう。ボクから見ればおじさんだけどね。」

「おじさん・・・?」

「だってボクのお母さんの兄だもん、夏兄ちゃん」

「あっ、名前、夏さんだった!すっかり忘れてた」

優奈は純の言葉を聞いて思い出した。

「そろそろボクの家入る?」

「行きたい!」

翔太が答える。

純は探偵事務所の2階へと二人を案内した。

優奈達がリビングへ行くと、床で大の字になった純一が寝ていた。

「「誰、この人・・・」」

優奈と翔太は言う。

「いびきうるさい・・・」

翔太はつぶやく。

「おこさないほうがいいよ。」

「怖いの?」

「美川さん、コイツ、怖くないから。」

「というか、誰なの?この人」

「いうの忘れてた。岡田さん、この人はボクの親戚二人目の純一兄ちゃん。」

「ほー」

「話変わるけど、推理小説どこにあるの?」

優奈は純に聞く。

「ああ、それならあそこにあるよ」

純は本棚を指差した。


###


「わあ、推理小説がたくさん!」

本棚の前で3人は推理小説を読んでいた。

「これ、あの人の小説じゃない?ほら、今クラスで話題の・・・」

琴乃喜孝ことのよしたかだろ?」

後ろを向くと純一がいた。

「兄ちゃん、いつ起きたの?」

「さっきだよ。」

「ねえ純君。琴乃さんの最新巻ある?10巻とか」

優奈は聞いた。

「あるよ。兄ちゃんの部屋に」

純一は二人を自分の部屋まで案内した。


###


「もう発売してたんだ、10巻」

「翔太、昨日発売されたばっかなんだよ。」

純一が翔太に応えた。

「二人とも、もう仲良くなってる・・・」

優奈と純は純一と翔太の方を見た。

どうやら二人は気が合うようだった。

翔太は10巻を読み始める。

「そうだ、翔太。10巻読み終わったからかしてやるよ」

「えっ、いいの?やったあ!」

翔太は喜んだ。


###


夕方5時。

優奈と翔太は茂木探偵事務所を出た。

「楽しかった!帰ったら読もう」

翔太は純一にかりた本を持っていた。

「私、次かりたい」

優奈は翔太に言う。

「じゃあ、ボクが読み終わってから純一兄ちゃんに聞いてみなよ」

「そうする!」

翔太と優奈は玄関の方に行き、ドアを開けて出た。

純は2階の窓から、帰ってゆく二人を見つめた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る