《Wi-Fi接続》 Ⅱ
扱いやすく、加工も手入れもしやすく、そこそこ頑丈で、それなりに軽く、安価で手軽。
よって探索者ギルドが支給する
「仕方ないからその辺の木の棒とかで戦ってたんだけど、やっぱりそれも燃え尽きちゃうんだよなあ」
どうでもいいけど、こいつ、もう辛うじて残ってた敬語の残骸も消え失せたな。
「これって《業炎剣カルマイド》のせいなのかなって思って、ちょっと見てくれねえかなーって」
「…………まあそれは構わんが、お主、自分の《技能樹》の事は誰にも話しておらんだろうな」
大前提として《
組織によって扱いは違うものの、大前提として人に軽々しく教えて良いものではない、
その全容を知るのは専任の《技能調整士》ぐらいのものだ。
いや、
こいつの場合、ただでさえよくわからんのに、強力なスキルが発現していることは間違いないのだから、下手に知れれば悪用されかねない……というのも大いにあるが。
「言ってない言ってない。焼肉屋も行ってない」
「ならば良い、どれ、背中を見せてみよ」
服を脱がせ、背に指を這わせ、改めてスキルを確認する。
・第二階梯
LV1 パッシブアビリティ【業炎剣の主君】《
LV2 パッシブアビリティ【業炎剣の加護】《炎熱強化+炎熱攻撃付与》
LV3
「………………うーむ」
現状、《業炎剣カルマイド》が効果を発揮している【
筋力上昇及び炎熱無効に関しては、
《業炎剣カルマイド》の現物はそれなりに重量があり、振るうためには相応の力が求められるサイズなのだろう。
名称から察するに炎を扱う魔剣なのだろうから、所有者自身に害が及ばないよう耐性を付与するのも理にかなっている。
が。
「本来であれば《業炎剣カルマイド》を振るう前提の【特殊能力(アビリティ)】じゃからのう」
スキル自身がそれ前提の出力を発揮してしまうために、生半可な武器ではスキルの補正そのものに耐えられない。
繰り返すが『現物がないのにスキルだけ発現している武器スキル』なんてのは、本来ありえないが故の
「ええ、じゃあ俺ってそもそも武器使えないの!?」
「軽合金で駄目となると、武器の素材に関係なく破壊してしまう可能性もあるのう、根本的に炎耐性のある素材で出来た剣を探す方が早いかもしれん」
「例えば?」
「サラマンダーの鱗やら、イフリートの心臓やら、その辺りの素材を練り込んだ合金とかじゃな」
「お値段は?」
「ン十万ディオールで済めばよいのぅ」
「うげぇぇぇぇ……」
宿った強力なスキルであることには違いないが、身の丈に合わないのもまた事実。
「まあ、しばらくは現状維持じゃな。今制御しきれぬ以上、別のスキルを育てるほうが良かろう」
よくわからん奴の発現したよくわからんスキルが、いい具合に枷になっているのを確認し、アンゼリセはついそう言ってしまった。
言ってしまったのだ。
「そっか……じゃあ
「もちろんじゃ! ……………………ん? 誰の?」
「俺の」
「そなたの? なんで?」
「いや、だって俺スキル二つしかないし……」
「………………」
しまった。
こいつ何生えてくるかわかんないんだった。
「【
「うーん……そうじゃなあ……………………」
結構あるなあ……新しい枝葉を伸ばせるくらいにはなあ……、
たとえ初心者の保護者つき迷宮探索であったとしても、こいつはこいつでちゃんと命がけの経験を積んでいるんじゃよなあ……。
どれほど規格外、というか問題児であったとしても、それ読み取れてしまうアンゼリセは、人の子の努力に、ついほだされてしまうのだ。
「…………よかろう、新たなスキルを発現させてみようではないか」
「よっしゃあ! 使いやすいの頼むぜ!」
「それは保証せんが……」
相変わらず複雑に絡み合った《
しかし《焼肉食べ放題》から新しいスキルを派生させるのも良くない、《業炎剣カルマイド》レベルの新スキルが万が一でてきてしまったら、更に制御が効かなくなってしまうこと請け合いである。
となれば……。
「新しい第一階梯スキルを目覚めさせるぞ、力を抜くがよい」
「でろーん」
「だらけるな!! シャキっとせい!!」
「今力を抜けって」
「そんなに肩を張るなぐらいの意味合いじゃからタコのモノマネされても困るんじゃが!?」
「っしゃあ! 頑張って力抜きます! シャス! うおおおお!」
とりあえず背中に針を刺してみた。
「いや、本当、調子乗って悪かったって思ってます……マジで……」
「よろしい、わらわも鬼ではないからの……」
改めて《
「……まあ、あれじゃ。少なからず戦っておったわけだし、その【経験】を鑑みれば一般的な戦闘スキルになる可能性も…………」
そうしてアンゼリセの眼の前には、新たなスキル名が記された。
「…………………………」
「あっづ! スキル目覚めたときの奴だこれ! アンさん! どうだった?」
「……………………ん? ん?」
「アンさん? また意地悪?」
「ちゃう、そうじゃなくて、んん? なんて読むんじゃこれ……」
「え、何、読めないとかあるの」
「いや、本来はないんじゃが……ええと、だぶりゅー、あい、うぃ、うぃーふぃ……?」
アンゼリセの中の知識を総動員して、なんとか言語化を試みる。
ただ、間違いないのは、今までこれと類似するスキルを、アンゼリセは見たことがなかった。
「…………まさか!」
だが、イツキはなにか気づくことがあったらしい。脚絆のポケットに手を突っ込んで、何かを取り出した。
「そなた、それは……」
それは《焼肉食べ放題》の店内にあった、あの大きな光る板によく似ていた。
いや、アレよりは大分小さい、手のひらサイズだ。アンゼリセにはついぞよくわからなかったものだが……。
「やっぱり……
「な、なんじゃ」
「それ……《
なんて?
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