第7話 敵の影
シュンはテクノクリア社の機密ファイルを手に入れたものの、カナが「プロジェクトA」に深く関与していたという事実に衝撃を受けた。彼女はジャーナリストとして危険な調査に関わっていたが、何故そのことを彼に隠していたのか。自分に何かを守らせようとしていたのか、それとも彼自身も信じられなかったのだろうか。
考えを巡らせながらも、シュンはビルの出口に向かって急いだ。だが、シュンはビルの中で見張られているという感覚から逃れられなかった。セキュリティガードの疑念に満ちた視線、監視カメラの冷たい目――彼は既にテクノクリア社の監視網に捕らえられていることを確信していた。
逃亡
シュンは地下駐車場からビルを脱出しようとしたが、エレベーターに乗り込んだ瞬間、建物内に警報音が響き渡った。テクノクリア社のセキュリティが彼の動きを察知したのだ。背筋が凍るような緊張感の中、彼は急いでエレベーターから降り、非常階段へと駆け込んだ。
ビルの下層階へと駆け下りながら、シュンは早くも後ろから足音が近づいてくるのを感じた。追手が迫っている。彼は必死に階段を降り続け、出口までの距離を縮めていった。
ようやく地下駐車場にたどり着いた時、シュンは不意に隠れる場所を探した。追っ手の足音がさらに近づいてくる。彼は何とか駐車していた車の間に身を潜め、静かに息を潜めた。
数秒後、セキュリティガードたちが駐車場に到着し、辺りを警戒して歩き回り始めた。シュンは息を殺し、じっとその場で動かないようにした。彼らが目の前を通り過ぎる瞬間、シュンは車の影に紛れて姿を隠し、彼らが反対方向に進んでいくのを確認すると、素早く駐車場の出口へ向かった。
暗号の解読
なんとかテクノクリア社から逃げ出すことに成功したシュンは、身を隠しつつ手に入れた機密ファイルの中身を調べ始めた。だが、それらのファイルは高度な暗号化が施されており、簡単には解読できない状態だった。カナがこのファイルを解読しようとしていたのなら、彼女はどこかに手がかりを残しているはずだ。
シュンはカナの住んでいたアパートに戻り、彼女の書斎に目を向けた。そこには彼女が残したノートや資料が乱雑に置かれていたが、シュンは一つのノートに目を留めた。それは彼女が「プロジェクトA」に関する調査を始めた頃からつけていたものだ。
ノートを読み進めると、そこには様々なコードや計算式が書き込まれていた。彼女は「プロジェクトA」のデータを解読するために、独自の暗号解読手法を編み出していたようだ。そのメモに記された一つの数式が、シュンの目に留まった。
「これだ…カナが探していた解読の鍵かもしれない」
シュンはその数式を使って、機密ファイルの一部を解読し始めた。数時間に及ぶ作業の末、彼はついに「プロジェクトA」に関する重要な情報を引き出すことに成功した。
そのファイルには、テクノクリア社が進めていた違法な実験に関する詳細が記されていた。それは人体に危険を及ぼす可能性のある新しい技術を開発するためのもので、倫理的にも法律的にも問題のある内容だった。カナはこの事実を暴くために命を懸けていたのだ。
謎の人物の出現
しかし、解読を進めていく中で、シュンはもう一つ驚くべき事実に気づいた。テクノクリア社の「プロジェクトA」の計画には、もう一人の名前が関連していた。その名前はカナの信頼していた友人、リサだった。
リサは表向きはカナの協力者であり、彼女の調査を手伝っていた。しかし、シュンはリサの名前がプロジェクトの関係者として記されていることに疑問を抱いた。リサは本当にカナの味方だったのか、それともテクノクリア社の一員としてカナを裏切っていたのか。
「リサ…お前は一体何をしているんだ…?」
シュンは混乱と怒りを感じながらも、リサに会って真相を確かめる必要があると感じた。
翌日、シュンはリサに接触するために彼女の自宅へと向かった。しかし、リサはすでに行方不明となっていた。彼女の家には何者かによって荒らされた痕跡があり、部屋の中には重要な書類やパソコンが全て持ち去られていた。
「リサ…お前も狙われているのか…?」
シュンは新たな謎に直面した。リサは裏切り者なのか、それとも彼女もまた巨大な陰謀の犠牲者になったのか。シュンの前にはさらに複雑な謎が広がり、彼の調査は一層危険な方向へと進んでいく。
迫りくる危機
シュンは再び孤立してしまった。カナの行方もリサの真相も分からないまま、彼はテクノクリア社の陰謀に立ち向かわなければならなかった。しかし、彼は既に危険な領域に踏み込んでおり、背後にはテクノクリア社の手が迫りつつあった。
「カナ…僕は君を見つけ出す」
シュンは強い決意を胸に、さらなる真実を追求し続けることを誓った。
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