もmm

イタチ

第1話

夜の叫び声が嵐の降る窓の向こうからガラスを叩いた



丸い眼鏡は、カーテンの向こう側の丸井雨粒を流れるに合わせ、眺めていた

稲妻は、暗い街の中で唯一、空から、下に照らして行く

その黄金色に輝く龍は、街の建物から地面へと落ちていく

人々は、高価な傘の中にいる以外は

家の中で、長い時間を、眺める以外にすることはなかった

だれも居ない家の中

私の心音が、雨の中に紛れ

それを照らすように、ライトが、溶けた蠟の中より

オレンジと青を混じった絵を壁にと這わす

机の上に、鉛筆の黒い粉が揺れ

黒い文字が、細い整頓された細かい横に、しがみ付いたかのように、びったりと、張り付き

私は、文字がざわざわと、騒がないように、静かにしながら、声を抑え、文字を描き続ける

描いた端から、黒いインクは、下にたまったような闇にのまれ

意味を、暗い画面に、飲み込まれていく

それでも、私はまだ、白い用紙の残っ離れ小島に、何とか、小さく、ごく小さな文字を、書き込もうと、努力するが、机の上には、インクの漏れだし、しみだして、机の端を、黒く汚している紙の前に立ち

服が汚れないようにし、机の下に、バケツを、置くしかない

ライトの下、黒いインクの中には、いつの間にか、万年海月が、浮き出し

白く時折、その漆黒の海から上がっては、闇の中に消えていく

私は、この紙が、一万年後も脱色されれば、紙の化石となり、石板のようになるのではと、祈りながら、過去の遺跡の石板の横を通り抜け

木で出来た廊下を、歪みを、とらわれないように、歩く

グネグネとしたその場所を、通り抜ければ、私は、ただの紙となるのは、明白である



地雷の目次を抜け

木々をすり抜ければ

私の眼球は落し物とし

くり抜き虫の餌食となることであろう

黒い黒板は、黒い数式を緑の中に書き込み

私の文字を思い出させるように騒ぎ出し

それに抗応するかのように

森の木々は幾億の草を、寒気を催すように

震え

その振動の余波は、私の安物のスニーカーを震えた

静まり返る顔の眼球のあった場所から

血の涙が流れ

もしかすると別固体か若い個体の可能性を示唆し

私の進む先に風が吹き

安いTシャツを揺らす

静かなさざ波は森の奥底、数億ページの本のページを揺らすドラゴンの目覚めを予期し

ただ立ち止まる私は静かにポケットのライターを取り出しつける

かちゃりと冷えた銀色のネジが、着火の色を

指に熱く伝えた


眼球を食べる甲殻類の屍は大気圏まで浮上し私の存在をdnaレベルから粉々に細切れに粉みじんに、私の屍を狙う

透明の呼び鈴は猫の群れを呼び

猫王の遺骸は、虫の王による結解の監視下に沈み

雲の流れによる計算ごよみを埋め綴る

かみしめた牙の間からハエの王の暦が鼻歌交じりにこぼれ

目玉の楽天は、屍の骨が詰まり

草むらの王は死んだ魂を貪ることに飽き

リカちゃん仁王の着せ替え人形を幾万も増やし

電球は流星をまね

火花を散らしながら

地底の天井にひしめき合う頭上より

ガラスの羽衣を巻き散らし

幾万の破片となり降り積もる

鼠共の雪上車は

狭い回廊を進み

われの亡骸は、硝子の中で血液を絞り染み渡らせた

地獄の門は開かれたなり

黒いマントをたなびかせたもののみが

灰色の鼓動を通り抜け

黒いスーツは死を呼びながら

叫ぶ赤子はちを喉からはきながら

われの鳴き声は猫の躯が叫びながら

空中のガラスをすすぐなり

目印の孤独を飲み込みながら

猫の横寝を嘯き

沈む鬼の笑いは

静かな箪笥のガラスの向こうに見える

ああわれの参加はビーカーに眠る

硫酸の中の赤子は

サングラスの海に笑う

万年筆は眠り

船は笑う

口の中の最近は夜に街から出て明かりの中で死ぬ

しじまの苦し紛れ

屍の子守歌

サブいドアの向こうの叫びは

ビーカーを割りながらタンスから逃げた

鳥ガラのスープはヒキガエルに負け

きつい坂道は誰の明かりもなく

スライドに切られた心臓は赤い血を流し

涼しげなまつ毛に添えて


換気扇が廊下イッパイ取り付けられ

歪んだろうかは、揺らめくように、その木の板の下から時折青白い炎をいらしていた

死人のようなげっそりとした頬を軍服帽に隠し

長髪を揺らしながら風の中を歩く

鼓動しているように揺れている気がする

モーターに巻き込まれないように髪を手に持ち

私の視線は揺らめくように

暗闇の奥

全力でうなり声をあげた換気扇の奥

大きな竜が猫のような瞳を

黄金色に激高に濡らしながら

向こうの方へと飛んでいく

私のつぶれた肝は

血を垂らしながら廊下の底に落ちていく

風が冷たい

もう冬であるが

モーターの過熱した温度は

ゆっくりと体内を温めていた

沈みゆく感覚は髪の中より膿みはじめ

消えゆく意識の中の自分はゆっくりと帽子を下げ

黄金色の瞳を濡らした

記憶の糸がほどかれるとき

待ち針は心臓を鳴らし

奥歯の奥から灰色の舌は

ついばむ様に色あせた歌を流す

孤独に独房に投獄された靴の嘆きを私はいまだに知る由もない

見も知らない私が振り返るときイワナの頭部は電気ストーブの鱗を見る


べっこう飴のささやきはプラスチックの中の袋で窒息し

水葬の中の遺体回収は黒字で刻まれ印刷し

その予言の執行者は蟻のようなルールを広い砂のように崩れ去った

こぼした奥歯の奥で芋虫が中に潜り込み

見もしないさなぎの中で私は笑う

孤児の行列は溶岩に飛び込む旅行を企画し

金持ちが出資するも逆算しその肉をほおばる子供

刻まれた石塔の幻覚

しくじるマンホールの中の歌

越えにならないこそばゆい感覚は

葦に埋め込まれた画鋲の気まぐれ

先兵の遺体はイワシのごとく金網に続き

その血液はタイルに三色目の赤を加える

白黒赤の都を歩く金属片の蟻の軍隊は

私の脳内を映すカメラで平和を指にし

体内の肉弁を掲げ、道に液を流しながら

孤独な反対運動を仕事について語るのは

蟻の女王の奪還を怠惰にやり過ごしたいだけだ

見たこともない地球儀は揺るぎ

王座で眠るペルシャ猫の絨毯に眠る子供も居ない

私の遡る王冠は真緑のメッキの中宝珠の深紅の目玉が開き

居眠りの大事さについて雄弁に目線は思い描きまた語る

口もない深紅の吸血鬼の入れ歯は眠りここ三百年百年に一度は悪態をつき

二百年に一度はよだれで深紅の椅子を汚した

その赤黒い歯はいやらしくひかり

クルミで磨かれたように揺れる


ベロニカの鍵盤は天井のシミから垂れる油を吸い込みいよいよその高貴なピアノは音色をゆがめ歪に醜くなり始める

ガキの内臓を縦横斜め三問字に開きならべた解剖図は

絵描きの願望から垂れ流された妄想の夢の跡をくちづさみ

血液の流れをつづる嘘は

大木は石板の細かく砕かれた石畳を踊り続ける

見えぬ足音の行列は明日とも知れぬ道を一直線に横の裏山のがけを落ち

翌日に皮に足跡が見えるのは

靴が小川に流れビーバーを苦しめているからに違いなく

目に見えぬ分子は砕かれざるに結合した世界は法律を誰も覚えられない機械法廷大真理法廷と名前をへんじ

人間はめったに裁判じょへにも通えない


抒情的な水滴は赤い色をビーカーに遊泳し

扇風機は、赤い風を騒音を巻き散らしながら動く

風はざらざらしており

黒い瞳は丸い黒い色眼鏡に飾られ

出目金の標本死体を木の枠の中硝子の奥に見据えながら

タイマーの切れた機械は止まる

電灯は息をひそめ、橙色の瞬きを繰り返す

扇風機の赤くただれた羽は、ゆっくりと赤いさびを落とす

部屋のどくろは、話し声をひそめ

自分の身近な怪奇現象を話し

自分の地元の話をする

暗い孤独に笑みを漏らし

死んだあの子の手を握りながら

窓奥の孤独な数え歌を子守歌に

記憶の奥底に眠る猫を撫ぜ

記憶のしじまのうろ覚えに動く木漏れ日に、火をともしながら

たいまつは青と黄色の中に、火の赤を揺らす

誰も知らない研究室で

私の体は自然分解を始めた


記憶の奥底をどぶさらいし

赤子の握る虫の死骸は前世の記憶を話しながら

君の記憶を切り離し始める

遠い星の放射能が、体を貫いた時

脳内の科学物質が破壊され辺りに見まみれの内臓が記憶としてプレゼントを配り

思考の停滞を蟻共の喧騒として

崩れ去る記憶の断片を話し

落ち着かせようとしたが、幾億の蟻の話は牙を打ち合わせ

血管を震わせ、鳥肌の毛穴から体毛が枯れくち落ちる

金魚の戯言は死に

見栄えの良いマネキンは剝製と戯れ首が落ちる

見えない釣り糸は馬鹿を釣り

魚のいない川は笑い

日にひに人を引きずり込む

隣の家から悪魔が笑い

覗けば空き家に人毛はなく

留まり知らぬ感情の波は

殺戮を知らず

一族は地獄の中で笑いつづけ

現世の苦しみは遠く及ばず地獄の拷問はかかわりなく罪の清算を繰り返した

夜道に猫は寝転び

自殺のしさを帳消しにし

チョークの白い足痕は、這いまわった苦しみを設計図とし

空中に呪いの痕跡を匂わせ

コーヒー店の奥底でココアの香りのするテーブルの下

古い木の足の横で

鼠は笑う

太鼓の記憶は、私の横を通り過ぎ

しら無いつぶやきがかばんの奥底で聞こえる

知らない人間の集められたのど笛は

いつも標本棚でいくおくも

ありもしない嘘を並べる

ピューピューとむなしい空笛は意味を見出すことなく

熊の眠り声となり

静かな餌となり果てる

屑箱の中の設計図は

人間の過去を抹消し

ボタンのない部屋で

金魚の声だけが、壁から聞こえる

意味のない言葉が死んだ人間の亡骸を

げろにまみれさせ

空から落ちる記憶は塵となり消える

壁の絵には死人の叫びが

夜のうれしさを、呪いながら歌っていた

足元の記憶はうそを話し

私の記憶は夜中に紛れ

意味のない空は壁に囲まれ

目の縫われた盲目の人形は

嘘の話に絶望を繰り返した

腐ったリンゴは、笑い声を変え

隣の死んだ武道の声をまね


止まらぬ記憶の流失を、留める防波堤は、砕かれ

血にまみれたレインコートは

赤子の列を、あやふやに波に隠し

目隠しされた看板は、不機嫌に首を傾げ

私の記憶を、抹消に、走る

知らないあの子の服の中で、生前の子守歌が産声を

狂った音声のように繰り返し

船着場から離れると

大きな熊が、雨の中無地な瞳を車の中詰め込まれた硝子の中から見つめる

記憶にない道すがら

ポストから赤い煙がゆっくりとわずかに街頭に紛れ見え

記憶のある道は雨に流され

六時の方向にある道は濁流の叫びの中

黄土色の記憶を引きずり出す

地中の古は

無色悩みの中

人間に寄生するように最悪を、摺り寄せ合わせ

記憶のない静寂の内部

心を失った人形の濁流は

そばのアカミミガメを撫ぜ

所々浮き出したその息を止める

私の殺意は張り詰め

針のように相手を追い詰めた

孤独な赤子の細胞は、泡のように消え

残った濁流のかくはんは、自分の命をすりおろし

地面に、シェイピングクリームのようなごみとして残る

濁流の匂いは、生臭い魚を腐らし

生前の行いは消え

夜の電気は幕を閉じた

薇の墓前の前

口のないマネキンの参列

意識のない医者の死体のマリネの瓶積め

孤独なあの子の蝋燭は消えた

意志のない魚の骨は

濁流の海を泳ぎ

しじまの静寂を騒がし

鼓動の叫びは山には静かすぎた

無の流れの救いは虫たちの死体により拒絶され

体の薬品は死してなお無価値のあかしを残し

とめどない誘惑は

己の罪悪の表示で足りず

辺りを腐らせ、悪の城壁を更に濃く強くした

それは罪の塔で誰も救われず

人間からはぎとる血肉油蝋骨で形成され

酷い悪臭のなか異常性に気付かない悪性が

さらなる地獄を呼び込み続ける

孤独な石は濁流の中本来の意志を忘れ成分となり道だけの形を見せ

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もmm イタチ @zzed9

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