第4話 《真面目純情派女刑事》


文字の誤り、それは、凶悪犯罪とまでいかないけれど、ストーカーよりも性質が悪い。



文字の世界では、一文字間違えることは、路上駐車やスピード違反と同じくらいの罪だと言っていい。



改行の際、一文字空けずに書き進んだり、連続する類語の間違えなどは、ドロボウや押し込み強盗に匹敵する、放ってはおけぬ、過ちだろう。



陽子は妄想に憑かれたようにそう考えてしまう。



いけないと分かっていながら、まるで職業病のように、いても立ってもいられなくなり、真面目純情派女刑事に早変わりするのだ。



次々と文字の世界の路上駐車やスピード違反を取締り、ドロボウや強盗の類いにはお縄をかけてゆく。



見る間に信也の文面上のあらゆるミスが、真っ赤に染められ、公正される。



陽子は、いつしか赤を入れないでは、信也の手紙を読むことさえできなくなっていた。 

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