第31話 俺たちは再び花火大会へ行くらしい。

「ただいまぁ」


リルが帰ってくる。俺は、そこで、もう一度誘うことにした。


「なあ、リル。花火を見に行こう」


前も一緒に行ったよな。

そして、その日はリルがすごく花火に似合っていてーー。


「行きたい!」



一緒に浴衣を着て、俺たちは、席を取る。

今回は、リルの友達である花恋ちゃん、真央、真叶で行く。


まずは夏祭りはたっぷり楽しむことにした。


「…そうそう。ここで二人を見かけたのよ」

「前はここで射的したよな」


思い出話を振り返りながら俺たちは花火を見るところまできた。


「じゃあ、二人にするわよ」


真央に、協力してもらった。二人にしてくれと言うと、真央は幸いにも嬉しそうにOKしたのだ。

リルは首を傾げている。



ドーン。


花火が上がる。建物と反響して二重になる。

それが、すごく綺麗でーー。


「なあ、リル。前も、こうやって見たよな」

「うん。あれがカズヤ、とかリル、とか言ってたね」


楽しそうに笑っている。

良かった、連れてきて。そして、帰ってきてくれて。


「なあ、リル?」

「うん、なあに?」


俺は一度息を吸って、吐いてから、リルの方を見る。


「…俺は、リルが好きなんだ」

「…!」


そりゃ、驚くよな。

だけど、俺はこの気持ちに嘘はつけないんだ。


「…リル。嫌って思うなら嫌で良い。今のを聞いて、どう思った?」


もしかしたら、真叶のことが好きって言うかもしれない。

もしかしたら、カズヤは嫌って言うかもしれない。

もしかしたら、もしかしたらーー。


「私ね」


リルが口を開く。


「最初にカズヤに会った時、ぶっちゃけ放っておいてって思ったの」


リルは俺の方を見ようとしない。

常に打ち上がる花火を見つめながら語る。


「でも。それからカズヤは、いろんなことを教えてくれたし、ハプニングもあった。カズヤは、すっごく優しいんだって。そう思えた」


前、リルが「カズヤに似てる」と言った白い花火が打ち上がる。

いろんな感情の色が混ざって、白色になるのが、光だよってリルは言ってた。


「だからね」


リルは、俺の方を向く。


「私は、カズヤのことが、大好きなの」


リルが微笑む。俺もつられた。

二人で笑い合いながら、でも二人とも多分、顔が真っ赤だ。

このどこか恥ずかしい雰囲気を、花火の音と歓声が隠してくれる。


俺たちは、もうここから先は何も言わなくても通じる。


「じゃあ」

「うん。行こうか」


俺たちは手を繋いで、真央たちのところに戻った。


「ただいま」

「おかえり」


何気ない日常に、急に飛び込んできたハプニング。

これは、俺とリルが出会うために、あったのだろう。


「カズヤ。今年も、お誕生日おめでとう」

「ありがと」

「ちゃんと今年はケーキ買ったから!」


意気込むリルの胸元で、俺がプレゼントしたピンクゴールドのネックレスが、花火に反射して輝いていた。




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