第30話 俺はやけ酒して、王女を拾ったらしい。

◇◇◇

今日も加藤さんに叱られた。


「とりあえず、酒飲も…」


財布とスマホだけ持って、外に出る。風が冷たかった。



「それ以上飲んで、大丈夫か?」


隣の客が俺に注意するが、そんなの気にしない。

今日は仕事を頑張ったご褒美だ。うん、そうしよう。リルがいなくなったなんて、そんなのは夢だ。きっと帰ったら、リルが笑顔で「おかえり、お疲れ」って言ってくれるはず…。



「やべ、飲みすぎた…」


視界が時々歪む。それも、結構。

あーあ、人生最悪の日だーー。


「うぅ…」


うん?女の子の声?そういや、なんだか前に女の子がいるような…。


ドサッ


「おい、大丈夫か?」


まじかよ。

女の子は倒れてしまった。それも、よりにもよって酔っ払った、この俺に。

その後、多分家に上げたのだろう。

どうやって帰ったのかは覚えていない。



朝。

俺は、確か昨日女の子を拾ったようなーー?

前と同じ流れだな、これ。


こんこん。


「入っていいか?」


すると、その子は部屋から飛び出してきた。


「カズヤ!」


そう、その子はリルだったのだ…!


「帰ってきた!私、帰ってきたの」

「うん、うん」


二人で涙ぐみながら、お互い抱きしめ合う。

ああ、これだ。


俺は、やっぱりリルがいないと。


「カズヤ。ただいま」

「…!うん。おかえり」


笑顔がやけに可愛かった。


「一也、大丈夫…ってえ!?」


真央がやってきて、目を丸くする。

そして、真央とリルも抱きしめ合う。


「それにしても、大きくなったね?」

「え?ああ、そうみたい。私、20歳なのよ」

「!?」


リルは時間軸のことについて説明した。


「じゃあ、もう成人なんだ」

「ね」


その後、リルは友達に会いに行ったようだ。

もちろん、スマホを持って。


「ねえ。一也」

「うん?」


真央が話しかけてくる。


「私ね、あなたのこと、好きだった」

「…!」

「ずぅっと、ずぅっと。だから、リルちゃんとお互いライバル視して競ってたのよ」

「え?」

「でも、もう諦める。リルちゃんと、幸せになるのよ!」


初めて知った。

だけど、俺は真央のことが好きなわけではない。大切な友人、幼馴染としてこれからも仲良くしていきたい。

そう言うと、真央はありがとう、と笑った。


真央の分まで、リルとは幸せになろう。


俺はリルに、自分の想いを伝えることにしたーー。





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