第29話 俺は本当に王女が好きだったらしい。
◇◇◇
それから、逃亡を図った隣国で、私は「日々野梨琉」と一緒に暮らしている。
戦火に見舞われたヒヴィリア国は、前回と同様、炎に包まれて滅びた。
このあと、確か私はノアに殺されて、気づいたらカズヤの家にいたはずーー。
「リル、ここどこよ?」
「梨琉、黙って。下手したら殺されるわ」
「ひゅっ」
そう、命をかけているのだ、今。
命懸けに逃げている。ノアがなぜ私を殺したのか知らないけど。
「いい?私は王女。戦争で負けてるから、命を狙われやすいの」
梨琉によく言い聞かせる。
もちろん、彼女はこくこくと頷き、反論してくることは無くなった。
誰だって、死は怖いから。
特に前回は、愛した人に殺されて、どれだけ辛かったか。今でも、心が痛むことだってあるというのにーー。
そんなある日、私は20歳の誕生日を迎える。
梨琉も、同様。
私たちは上手く隠れていた、はずだった。
だけど…。
「いた!」
「殺せ!」
ノアの声がする。
「梨琉、逃げるのよ!」
梨琉だけでも、逃がそうと思った。
だけどーー。
ぐしゃ。
ざくっ。
二人して、殺された。最初の時よりは、慣れたけどーー。
ノアは、笑ってた。
リリアと結ばれることがそんなに嬉しかったの?私はそんなに邪魔者だったのーー?
どうしてあなたは私を殺すのーー?
それでも、なぜか会いたいのはノアじゃない。認めて欲しいのも、愛して欲しいのも、ノアではなくなった。
カズヤに会いたい。
なぜか走馬灯のように流れている顔ははっきり思い出せて、でも何がなんなのかわからなくてーー。
ぱあ、と光が溢れる。自分でも、何が起こっているのかわからない。
私と梨琉は宙に浮かび上がってーーさっと消えた、らしい。
◇◇◇
「はぁ…」
リルがいない。
そんな毎日、俺は酒で気を紛らわそうと思った。
「おい、一也…。そんなに飲んで、大丈夫か?」
「大丈夫、大丈夫って」
奏人が心配する。
「望月くん。最近はあまり成果が出ていないわ!」
加藤さんが注意してくる。
何気ないこの日常、俺だけがおかしい。
みんな、普通なのもなんだか腹が立つ。
「おかえり…」
真央は、よくきてくれる。毎日残業、ご飯もまともに食べない時、リルの代わりと言ってはなんだが、真央は食事を作ってくれる。
真叶はたまに遊びにきてくれる。
「一也兄ちゃん。たまには遊ぼう」
そう言って、ゲームセンターとか〇〇展みたいなところに連れて行ってくれたり。
優しいけど、みんなには感謝しているけど、リルがいないとーー。
ああ。
俺は、本当にリルが好きだったんだなーー。
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