第28話 ここは時間軸が異なるらしい。

「あなた、「日々野梨琉」でしょう?わかるわ」

「なんで知ってんのよ!?」


本当に、なんで知ってるんだろう。だけど、見覚えがある顔、髪。


「リルって言った?ここはどこ?」

「ここはヒヴィリア国。私はこの国の王女よ」


なんとなく覚えている。

私は「17歳」で「日本」へ行った。

だけど、この世界の時間軸はどうやら違うようで、過去に戻ってきたにも関わらず、なぜかもう18。それに、未来が変わっているようで、ノアからも婚約破棄されないし、国も滅びていない。


リリアとノアは浮気してるんだけどね。


毎日何となく思い出す記憶を紙に書いていると、ある日この世界と「日本」の違いがだんだんわかってきた。

その代表が時間軸で、「日本」が一年経つ頃、「この世界」は三年経つのだ。

帰ってきてからもう三年。日本はまだ一年しか経っていない。


だけど。



「リル。婚約破棄させて貰う」


「この世界」で19歳、私は婚約破棄された。ただ、ちょっと時間軸の歪みのせいで遅れているけど。


「リル。戦争が起きる」


こうやって告げられたのも二回目だ。

そうして、このヒヴィリア国は滅びてしまうんだけど…。

救う気は起きなかった。


「女王にならなくていい」っていうのと、もう一度ここで戦火に見舞われて私が殺されたら、「もう一度カズヤに会える」と思ったから。


カズヤ。花恋ちゃん。真央。みんな、大切な人だから。


「逃げろー!」


私は、前回とは違い、「日々野梨琉」を連れて逃亡したーー。


◇◇◇

「リルちゃんがいなくなって一年半、ね…」


私は真央。そして、一也をめぐるライバル、リルちゃんがいなくなった。

一也は最近元気がない。やはり、リルちゃんがいなくなったことに対するショックだろう。


元カノとかいう女も来るし。


「…一也。元気出して、必ずリルちゃんは帰ってくるよ」

「…ああ」


それでも、生きているから。


異世界に帰ったのなら、どうやってその隔たりを渡ってきたのだろうか。

やはり、神様の気まぐれ?


そうだとしたら、神様は、残酷だ。


「…リルに、会いたい」

「…!」


失恋は辛い。

だけど、今は、リルちゃんの安全の方が最優先だ。


「じゃあ、リルちゃんが帰ってきた時に、元気がなかったらリルちゃん心配するよ」

「…そうだな」


最近はこれで元気を出してくれる。

そして半年で、一也は元に戻ることができた。


あとはリルちゃん。


ライバルでも、でもなんだかんだ仲が良かった。

これは、友達として、本気で心配しているの。


だからお願い、無事でいてーー!






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