第27話 私は異世界に来たらしい。

リルの大切さに改めて気付かされた。


この家は今、すごく暗くて。リルがいることでこの家に華が咲き、明るかったのだと今更ながらに思った。


「リルちゃんがいなくなった!?」


真央までが必死になっている。

何かは知らないが、いがみ合っていた二人、しかし本当は二人は仲良くなったのだ。


それでも、何もできない。

どんなに仲が良くても、どんなに一緒に暮らしていたとしても、俺たちは無力だ。


「だけどさ、変じゃない?」

「え?」

「リルちゃんは「日々野梨琉」としてここにきた。もしいなくなるなら、「リル」ちゃんだけがいなくなって、もとの「日々野梨琉」だけ残るはずなの。だけど、どっちもいないでしょ?」


確かに。

なら、「日々野梨琉」はどこに…?


「もしかしたら、異世界に帰って行ったかもしれないね」

「えっ!?」


と驚いてしまったが、確かにそれが一番可能性があるのだ。

だとすれば、「日々野梨琉」と「リル」はまた一緒ではなくなったーー「リル」はもう「日々野梨琉」には転生していないことになる。


異世界に帰って無事でいることを祈るばかりだ。


◇◇◇

「あーもう。ここどこよ!?」


私は日々野梨琉。美亜とかいう女狐に婚約者を取られて、最悪だと思ってた。そして道で倒れたのだけど、そこからの記憶が全くない。


そして目を開けたらーーここはどこよ!?


「あなたは…もしかして、リル様ですな!?」


通りかかった人が言うけど…何その格好、ださ。

どっかの誰かさんと勘違いされてるみたい。でも、「様」をつけてくれてるんだから。


「あーそうそう、梨琉」


名前はあってるし。

そこからなんか豪華なドレスに着替えさせられて、よくわかんないお城?みたいなところに連れて行かれたんだけど。


「リル様ならもういらっしゃいますが?」

「え?」

「それに、リル様は金髪碧眼でございます。この少女は黒髪。どこからどうみても違うでしょう。確かに顔は似てますけれど」


はあ?

せっかくお姫様ライフかと思ったのに!


「なにごと?」


明らかに上品な女が出てきた。


「リル様っ!」


こいつがリル?邪魔なんだけど。


「ねえ。どいて。私、ここに入りたいの」

「…ここは謁見の間よ」

「はぁー?なにそれ」


無礼な!と二人の男が私の腕を掴む。

よりにもよって、この私に!


「…あなたは、「日々野梨琉」ね?」

「…なんで知ってるの」


わからないわ、本当になぜかしら、と彼女は首を傾げた。

とりあえず謁見の間に入れさせられたのだが…。


「そなたか。我が娘、リルを名乗ったのは!」


誰、このおじさん。


なぜか私は一時間後に、牢に入れられていたーー。


「国王陛下、王女殿下に失礼な振る舞いを…!」


嘘、裁判とかもないわけ??

何この国!?


もしかして。

これって、異世界!?




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