第26話 王女はいなくなったらしい。

「リル?リルー!」


瑠奈が帰ってから、ずっと探し回っている。

だが、どうやら家にないないようだ。だとすれば、友達と遊んでいるのかーー?

どこかに出かけているのかもしれないから、もう少し待ってみよう。


夜9時

流石に出かけていないことが判明する。

じゃあ、リルはどこにーー?


「これは…リルの」


スマホ。

リルは、出かける時はスマホを必ず持っていくから外出じゃない。


どこにいるんだ、リルーー!


◇◇◇

「リル姫にご挨拶申し上げます」


今日はノアが訪ねにきた。

もちろん、「ノア」赤髪の方だが。


しかし、彼は今日、珍しくそそくさと帰っていった。

何か、用事でもあるのかしらーー?


「リル様。何をなさるおつもりで…!?」


侍従が止めにくるが私はノアとリリアの関係をあの婚約破棄の場よりも先に、見つけなければならない。

私は外出用のワンピースを着てノアのいる公爵邸に行く。


「リル姫様!?これは失礼いたしました」

「ノアに会いにきたの」

「えっ。あ…かしこまりました」


一瞬動揺したようだが、私が王女であることもあり、すんなりと入れてくれた。

だが、あの護衛は私に必要なことを伝えていなかったーー。


「リル様。ノア様は庭園におります」

「そう。わかったわ」


公爵邸は、王城も顔負けの大きくて美しい庭園を有する。

植物の希少な種も見られ、ここにくるのは私も癒しなのだが…。


「やだ、ノア様ったら。リルお姉様がいるというのに」

「リルなんかよりリリア、君の方が何倍も可愛い」


二人の話し声。

それはーー紛れもない、私が危惧する二人、ノアとリリアだ。

私はさっと草陰に隠れて様子を窺う。


「ノア様…?」

「リリアの膝枕は気持ちいいな」

「やだ、リルお姉様の方がいいに決まってますわ」

「リル?あの女に触れたいなど思ったことがない。きっと膝もリリアみたいにふかふかしていないんだろう。心と同じで」

「まあ、悪い人」


何をいちゃついているの。

私は、覚悟してきたはずだ。なのに、なのにーー。


「ふぅ、うぅ。グスッ」


感情を隠してきたはずだった。なのに、涙が溢れて止まらない。


私は問い詰める勇気もなく、その場を後にした。


◇◇◇

リルがいなくなって一週間。


捜索願いを出そうかとも思ったが、なにせ「日々野梨琉」と「望月一也」は全くの無関係だ。そんな俺が出したところで疑われるだけだろう。


家には、リルが喜んでいた服、浴衣などの衣服。さらに、スマホ、コスメ品など。様々なものが置きっぱなしにされており、俺はそれらを見つめることしかできない。


ただ無力な自分がそこにいるだけだったーー。


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