第22話 私の誕生日、カズヤはプレゼントを用意してくれたらしい。

「ぷはあ」


思いっきり飲む。リルはそれを真似ようとしたが、俺が止めた。

なんか、行儀が悪い気がする。


「リル、お誕生日おめでとう」

「ありがとう」

「はいこれ、プレゼント」

「えっ!?」


おどろいていたが、そんなの気にしない。

少し可愛いな、とも思いながら俺はプレゼントを渡す。


「わぁ…可愛い」


リルに似合いそうなピンクゴールドのネックレスをあげた。

反応は良く、安堵する。


「ねえ、つけてみたいな」

「ああ、いいぞ」

「そ、そういうことじゃなくて…」


彼女は下ろしていた髪をさっと上げた。

うなじがあらわになる。


「…つけて」


控えめに言うと、可愛すぎた。

控えめに言わなければ、可愛すぎて心臓が爆発するかと思った。もちろん頭は沸騰状態。


「っ、わかった」


さっと前からネックレスを後ろに持ってくる。

緊張と焦りで全身から汗が噴き出す。

もちろん手も。

上手く繋ぎ止められず、もたもたしていた。

その様子を、リルはくすっと笑った。


「カズヤってば、時間かかりすぎ」


あーあ、お酒が入ってるからかなぁ。

リルが余計可愛く見えてくる。


なんとか繋いで、俺は正面の椅子に戻る。


「うん、似合ってる」


顔を輝かせてぱあ、と笑った。


ーーそれ、反則だろ。


思わず俺は顔を覆った。

カズヤ、どうしたの?と聞いてくる。だめだめ、これ以上見たら俺はーー。


食事が来てから、俺とリルはすごくにこにこと他愛のない会話をしながらリルの誕生日を祝った。


「18歳になったの」


ふふ、と笑う。

王女とは思えないほど優しい雰囲気で、俺は思わず可愛いと言ってしまいそうになった。

今日は、なんだかドキドキさせられっぱなしだ。


◇◇◇

それから次の日、カズヤはケーキを買ってくれた。


「んー!これ、美味しい。なんていうの?」

いちごのショートケーキだ」


至って定番商品だ、とカズヤは言ったが、私には美味しくてたまらなかった。

こんな美味しいもの、前の世界では食べたことないもの。

つくづく、この世界の技術に感心する。


それから、毎日ピンクゴールドのネックレスをつける。

遊ぶ時も、カズヤと出かける時も、どこにもいかない時も。

好きな人のプレゼントがこんなに嬉しいだなんて、知らなかった。

ノアには何かを貰ったことなどなかったから、初めての体験。それだけで、わくわくする。


まさに、至福のひととき。

これが、ずっと続けばいいのにーー。






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