第19話 私の想いはバレたらしい。

◆◆◆

私は、昔から一也が好きだった。


少し可愛く笑う彼に出会ったのはいつだったかーー。

一目惚れだった。

でも、彼の性格で「嫌」と思うことはひとつもなく。

むしろ好感度が上がり続けるばかりだった。


告白してくる男子、全員を振って、ただ一也が振り向いてくれるのを待ち続けた。

それなのに…。


「ごめん。大学、真央と違うところに行く」


ーーずっと、一緒だと、そう思っていた。

メールできたって、会うのとは違う。


それから、疎遠になって2年経ったある日、彼は突然報告してきた。


『俺、彼女できた』


ーーは?彼女?私より?どんなにいいやつなのかしら。さぞかし可愛いんでしょうね?…本当は、殺したい。


どこまでもそんな本音を抱えたまま、『おめでとう』と言った。

この時だけは、「会う」のではなく「メール」で良かったと心底安堵した。

こんな、半泣き顔なんて、とても見せられない。


『うん、ありがと。俺のことが好きって言う人いなかったから自分でもびっくり』


違う。

一番そばにいたよーー。

それでも、気付かれることなく。


ある日、SNSを見た。

彼女さんとのツーショットが載っていた。


確かに可愛い。

ーーでも、それだけでしょ?

きっと、私の方が何倍も、何倍も一也のことを知ってる…!


嫉妬に狂った私は、それは醜く、でも自分でもわかっていた。


仕方がないのだ。

ある日、そう思い始めることにした私は、ずっと好きな人の幸せを祈り続けていたーー。


彼女さんとも上手く行ってるようだし、もしかしたら結婚するかもしれない…。

実際、もう家族に会ったと言っていた。


ーーもう、私の恋は終わりなんだ。

そう考えて、泣いてーー。


「なにあの子…?」


久しぶりに上京した私は、夏祭りで見かけたんだ。

一也と、彼女さんではない、とっても可愛い子ーー。


浮気?

だが、真面目な一也が、そんなことをするだろうか?

一也の父は浮気して出て行った人だ。

そして、それを恨み続けた一也と、彼の母。


嫌いな父と同じ行動をしても、母を傷つけるだけだと、一也は知っている。


なら、あの子は誰だろう。

あの子は、一也の隣に相応しいのーー?


「リルだ」


傲慢。居丈高。すぐに、一也の好みでないと安心して、その証拠にこき使ってやった。

だけど…。


「王女なんだ」


ようは、巷で噂の「異世界転生」。つまり、彼女の出生は、私たちより遠く及んだ雲の上の存在…。


◇◇◇


「すまない」


一也が退室したあとで、そう口にすると、リルと呼ばれた彼女はにっこり笑った。


「知ってるよ。カズヤのことーー好きなんでしょ?」

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