第18話 俺の家にきたのは幼馴染らしい。

「なあ、カズヤ?この問題がわからないんだが…」


リルに聞かれた問題は、まさに「日本の歴史」だった。そりゃわからないだろうな…。

どれどれ、と問題を見てみる。


『荘園制について…』


ああ、難しいところだ。

俺も教えられるか自信がない…。


ピンポーン


玄関のインターホンが鳴る。

リルが走ってインターホンを覗く。


「なあ、カズヤ。この女、誰?」

「え…?」


俺も覗くと、それは俺の知り合いでーー。


「久しぶり、一也!元気だったー?」


勢いよく飛び込んできたのは幼馴染である真央。

大学からは疎遠になったが、もちろんそれまで仲が良かった。俺は、真央を好きになったことだってある。


「えーっと…あっ、可愛い女の子、いたよね?」

「え…?あ、瑠奈か?瑠奈は…」

「あー、違う違う、彼女さんじゃない。夏祭りにいたでしょ?」


というと…リルのことか?

つまり、夏祭りにいたのを見たってことか。


「浮気、してるのかな〜?」

「いいや、瑠奈と別れた後だから」

「えっ」


真央の顔が少しにやける。どうしたの、と聞くとなんでもないよー、と真央の得意の笑顔で返された。


「で、その子は?」


きょろきょろと見回すところに、リルが来る。


「ええっと。誰だ?」

「わぁ…って…高校生?なーんだ」


何が「なーんだ」なのだろう?

それに、特に仲良くしようと言う雰囲気でもない。

むしろ、なんだかばちばち視線が飛び交っているような気がするのは、俺だけだろうか?


「真央です。初めまして」

「はぁ。リルだ、よろしく」


素っ気ない。

真央は何この子、敬語は?信じられない、と早々にリルを給仕のように扱った。


「ねえ、リルちゃん?お茶持ってきてくれないかな」

「リルちゃん。暑いわ、アイス買ってきて?」

「リルちゃん、これちょうだい」


王女に命令するのって、すごいなぁ。

しかし、意外にもリルはそれを全てやってのけた。


「真央。水を注げ」


あ、命令はやはり王女の方が上か。


「はぁ!?なんで私が?大体、敬語も使えないやつにこき使われるなんて…」


リルとしては、「王女をこき使うなんて」と反論してしまうだろうな。

その後も彼女はぶつぶつ文句を言いながらリルとこき使い合う。

俺はしびれを切らしてとうとう真実をぶちまけた。



「えっ…オウジョサマだったの?なんかごめんなさい…」

「ああ。本当に、プライドがへし折られるかと」

「うぅ…」


簡単に許すほど優しいリルではないので、多分真央は叱責の念にかられるだろう。


「それはそうとして、なぜきた?」

「え?そりゃあ幼馴染の顔は見たいでしょ?」

「ああ、まぁ…」

「それに」


真央はさっと俺に寄ってくる。

俺の手に自分の手を重ねてーー。


「ちょっと、何してんの?」


リルが止める。

ふぅ、危ない。俺はもう真央を幼馴染としか見れないのだから。


「ちっ…失敗した」

「…?なにか言ったか?」

「いいや、なんでもない」


ぼそっと何かを言ったようだが、得意の笑顔で隠される。


「でも、信じられなかったんだよ」

「え?」





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