第15話 王女は俺がいる風呂に入ろうとしてきてるらしい。

「準備は?」

「万端!」


俺たちは今から沖縄へ行く。

リルが昨日からずっとソワソワしているのは知っている。楽しみにしてくれて何よりだ。


「ここで、荷物を預けるんだ」


一から教えるというのも、案外悪くない。

リルは「日々野梨琉」として搭乗券をかざした。


「飛行機のなかでは機内モードにするんだ」


多分よくわかっていないだろうな…。



「わあ、すごい、暑い!」


沖縄に着いた。

まずはホテルへチェックインだ。リゾート地なので、海もある。

水着も持ってきた。


「どこに行きたい?」

「うーん。疲れたからあまり…」


ということで、今日はもうゆったりして明日から動くことにした。


しかし、王女だからとくつろいできたわけではなさそうだ。

ベッドのふかふかさには感心していた。

礼儀正しいのは羨ましいけれど。


「ここのディナーは美味しいと評判なんだ」


夜はお刺身で、もちろん美味しかった。

リルは、初めて食べる「お刺身」に感動していた。



「どっちが先に入る?」


揉めるのはやはり、風呂だ。

夏なので、温泉も暑いから部屋に備え付けの風呂にしようという話になったんだけど…。


瑠奈は、「先に入りたい」と言っていた。

だから、女子とはそういうものだと思っていたが。


「どっちでも」


そういうのは気にしないタイプなのだろうか、リルは?

別に、いくら時間がかかっても、女子なんだしそこは気にしないけど。


「カズヤ、先に入ったら?」

「えっああ…じゃあ、お先に」


はぁ…とぶくぶくと鼻までつかる。

夏だけど俺は、こう見えて旅行の時は毎回湯を張るタイプなんだ。


その間にリルが化粧をとるという。


はぁ。

疲れたなぁ…。

最近はいろんなことがあったから、俺はゆったりする時間ができて嬉しい。


「なあ、リル。入浴剤、入れてもいいか?」


そこにいるであろうリルに話しかける。


「うん、いいよ」


しかし…。


「なあ。リル。そ、そこに、置きっぱなしじゃないか…?」

「あ、ある」


まさか、洗面台に忘れてしまうとは。

失態…。


「持ってきてく…」


いやいやいや。

待て、俺。

瑠奈じゃないんだ、リルは。まだなんの進展もないんだ…。

って、「まだ」ってなんだよ、「まだ」って。


頭がすごく混乱しながら、俺はもうそこに置いてもらって一旦リルにその場を出てもらおうと考えたのだが…。


「…分かった」


な、何がわかったんだ!?

俺の考え?それとも言葉に!?それとも…。


「入ってもいい?大丈夫、タオルは巻くから…」


いやいや、それでもだめ!

君はぴちぴちのJKなんだから!

リルから見れば俺なんておじさんだ。そんなやつにタオルがあったとしても裸を見られて大丈夫か!?


「待て。俺が先に上がる…」

「えっ。もう脱いじゃったけど…」


はあああ!?

まずいことになってしまった…。




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