第二章 近づく二人
第14話 私たちは旅行へ行くらしい。
「ーーでは、これらが夏休みの宿題となります。みなさん、よい夏休みを!」
私はリル。ある日、異世界からやってきた…いわゆる「異世界転生」をした王女だ。
幸運にもカズヤという男性に拾われて、厄介になっている。
そして、今日から夏休みだ。
「カズヤ、ただいま」
「ああ、おかえり」
今日はカズヤも休みを取ったらしい。
「ねえ、カズヤ。夏休み、どこか行こう?」
「…そうだな。どこがいい?」
私は花恋ちゃんと遊ぶ約束をしているが、それ以外には特になんの予定もない。
「日本では、夏休みは何をするんだ?」
「うーん。ああ、旅行、な、ら…」
お互い目があってしまう。
思わず背けた。き、気まずい…。
なんで最近はカズヤのことを意識してるんだろう。目が合うたびドキッとする。
「りょ、旅行か…」
話を戻す。
「旅行」という概念は、あまり王女に関係のあるものではなかったが、よく婚約の許可を王にもらいにきた貴族たちが「念願叶ったら新婚旅行に行くんです」と言っていた気がする。現にリリアもノアとバカンスという名の旅行に行っていたし。
ただ、自身は経験したことのないものだ。
「どこに行くのか?」
「ああ…夏は暑いからな。北ーーでもいいが」
北。
それは、地球でいう「寒いところ」という認識だけはある。
しかし、私の実家ーーというより、王国が北方に位置していたから冬は雪が何メートルも積もるところもあった。
だから、暑いところに行ってみたい。
「暑いところ…か」
結局、私たちは沖縄に行くことが決まった。
「旅行に行くなら何を持って行く?」
今日は花恋ちゃんと遊びに来ている。
さりげなく。持って行くべきものを聞いてみる。
「ええーっとね…新しい服は買う!あとは、コスメ品絶対、生理用品も絶対!あとはね…あっ海には行くの?」
「えっ。海…だが、「サメ」とかいるんだろう?」
「えっ」
水族館で見た「サメ」。あれが本当にいるのなら、はっきり言って恐ろしい。
だが、花恋ちゃんは目をぱちくりさせてその後少し笑った。
「梨琉ちゃんってば、面白い!サメは浅瀬にはいないでしょ?」
そう…なのか?
まあ、とりあえず安心ってことだろうな。
「海に行くなら水着はあった方がいい!」
「…っ。だけど、持っていないんだ」
じゃあ、買いに行こ!と彼女は私の手を引いて連れて行ってくれた。
「あとは、服入れて、化粧品も。あと入れるべきなのは…」
私は今、「すーつけーす」に荷物を詰めている。
カズヤが買ってくれたんだ。
この便利な入れ物に、驚くばかりだ。
そして明日、「ひこうき」に乗って「おきなわ」へ行く。
未知のものばかりだ。
「準備は?」
「うーん、あとちょっとかな」
絶対に、楽しんでやる!
そして、朝がやってきた。
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