第12話 私はなんだかもやもやしているらしい。

「浮気、されてただなんて…ごめんなさいね、望月くん」


本当です。

瑠奈も面倒だったけど、加藤さんの睨む目が一番怖かったです。

なんて、言えるはずもなく…。


「い、いえいえ」


あー、言いたいこと言えないなんて、世の中不便だな。


「なにか、代わりに償いでも…」

「じゃあ、夕飯奢ってください」

「わかったわ」


あ、言ってしまった…。

癖で。

でも、リルはどうなるかな?


…よし、連れてこよう。浮気されたことがバレたらもう秘密を隠すなんて、これより面倒なことはない。


「あの…連れも一緒に…」

「連れ!?わ、わかったわ…」


なんか、誤解されてる気がする…。



「え?ご飯!いきたい」


リルが珍しく嬉しそうにしている。

着替えさせて俺はリルと共に加藤さんのところへ行った。


「待ってたわ…って、まさかのJK!?うそ…望月くん、あなたって…」

「あー…、とりあえず後で説明しますから、店に入りましょう」


◇◇◇


ご飯を奢ってくれると言う女性は、とても綺麗な人だった。

だけど、カズヤとどんな関係?


カズヤは私を、「親を失って家無しになった高校生をうちで預かってる」ってことにしてる。まあ、親はいるはずなんだけどね。

追い出された…って考えるのが自然だ。


上司だとカズヤは言っていた。

けど、なんか違和感が…。


「まあ、望月くんは、真面目だもんね」

「望月くんは、ミスは多いけど案はすごくいいのよ」


お酒を含んだ加藤さんは、カズヤのことをものすごく褒めてる。

そして、カズヤもそれにびっくりしている。


まさか、加藤さんはカズヤのことを…?

いやいや、まさかね。


ただの上司と部下だ。


もやもやしながらその夕飯を終えて私たちは家に戻った。



「ねえ、カズヤ。加藤さんって、優しいの?」

「いいや、社内一怖い。「鬼女」って別名があるんだからな」


とても、そんな人には見えなかったけれど。


「はっきり言って、あの人に一番怒られてるのは俺だ」

「へぇ。カズヤって、仕事できないんだね」

「う、うるさいっ…!」


なんか、楽しい。

カズヤって、よくみるとかっこいいんだなぁ。


ーーって私!

何を考えてるの。

異性をかっこいいなんて、そんなこと、前の世界でも思ったことない。

浮かれてるんだ、きっと。



「日々野さぁん、おはようございますっ」


今日も、美亜が突っかかってくる。

面倒だなあ。

私に構わないで、「怜斗」とイチャイチャしとけばいいのに。



「リル。今日も元気?」


そして、私を「リル」だと見破った人ーー「ノア」が。

彼は、私を殺したにもかかわらずーーこうしてやってくる。

だから、警戒が必要なんだけれど…。


「リル」

「リル、一緒に…」


普通に鬱陶しい。


そういえば、彼をとったーー「リリア」もいるのだろうか?

















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