第11話 俺に客…?と思ったら、浮気女が訪ねてきたらしい。
最近は、なんとなくリルの様子がおかしい気がする。
そもそも「可愛い」なんて簡単に言うべきではなかったかーーとも思ったが、率直に告げただけだ。
「はあ、望月くん。いつになったらーー」
今日も加藤さんに怒られている。
というか、悪い点を何も言ってくれないので、改善のしようがないのだ。
「望月さーん。お客様がお見えですよっ」
事務の人が呼びにくる。
客?
俺には心当たりが全くない。
「わあ、久しぶりね」
「は…?なんできたんだよ!?」
会いたくなっちゃって、と反省のかけらもない女。
それが、こいつ、瑠奈だ。
「元気そうで良かった!」
「はぁーまじでこっちは忙しいんだけど」
「こ、こっちだって大変なんだよ!」
いや、知らんがな。
浮気して出て行ったのはお前らだろ…。
「帰って」
「え、嫌だよ!」
「はぁ…用件は?」
「もう一度、付き合って欲しいの」
は?誰がお前なんかと付き合うんだよ、浮気女。
一度離れると、瑠奈ってこんな奴だっけ…とこいつと付き合っていた俺が信じられなくなる。
「だって、あの人、すぐに私のこと捨てたんだよ!ひどくない?」
「お前だって俺のこと捨てただろ」
「そ、それは…ほら、水に流そう?また付き合ったら楽しいって!」
こいつは、一体何を言ってるんだ?
「付き合って楽しい」のはお前だけ。俺はもうこの瞬間に、瑠奈に残っていたわずかの愛想も尽きてしまった。
「帰れ」
「嫌」
「帰れって!」
「なんでよ!?」
はぁ、めんどくさい!
「なんで」って…俺がその提案を受容しなかったってことだろ。浮気したくせに、よく顔を見せられることだ。
「俺はもうお前のことなんてどうでもいい。帰れ、浮気女」
「ひ、ひど…っ浮気女、だなんて…」
あぁー、鬱陶しい。
泣くなよ、泣きたいのはこっちの方だよ!
「どうしたの!?」
あ、さらに面倒になった。
なんでここで入ってくるんですかーー「鬼女」こと加藤さん。
「望月くん!女の子を泣かせるなんて、最低ね!」
事情を何も知らずに責めてくるあなたもどうなんでしょう…。
「はぁ、後で説明しますから。とにかく瑠奈、帰れ」
「嫌、もう一度付き合おう!」
「こっちはそれが嫌なんだよ。帰れ」
「嫌!」
めんど。
なんでここまで俺は泣かれなきゃいけないんだろう?
瑠奈は必死に首を横に振ってるし。
加藤さんはめっちゃ俺のこと睨んでるし。
「そろそろ面倒だよ、瑠奈、帰って」
加藤さん、そんなに睨まないで。
俺、何も悪いことしてない…はずだから。
「なんで!嫌って言ってるじゃん!やり直そうよ!?」
「それが嫌なんだよ、この浮気女!」
ひっと瑠奈は声をあげる。
そろそろ、帰ってくれるかな…。
「えっ、う、浮気…?」
加藤さんは、ようやく状況を把握したらしい。
瑠奈が「やり直そう」とか言ってるから。
「とにかく帰れ」
「…っ、またくるから」
もう来るな。
そして俺はーー加藤さんと向き合った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます