第9話 王女は友達を作ったらしい。

「それにしても、日本語ペラペラなんだな」

「ああ。どうやらそういう設定にしてくれたらしい」


だが、最近の言葉はわからないと言う。

まあ、そりゃそうか。だって、そんな「沼る」とか、そういうのは前の世界ではなかっただろう。


「それにしても、この言葉はなんだ?…「がーちゃー」?「ほんまごめんやで」?」


え、なんだよそれ。

社会人として、俺も老いたきたかもしれない。


「そういう時のためにネットがあるんだろ」


これしか俺がアドバイスできることはない。虚しいなぁ。


「「それガチ?ほんまゴメンやで」って出てきたんだけど…ガチってなに?」


流石にこれはわかるけど…多分、説明できない。逆に説明できたらすごいと思う。



「なあ、カズヤ。今度私、友達と遊んでくる」

「おおー。行ってらっしゃい」

「あ、だけど。この家くるかも」

「え!?掃除しないと…」

「あー。大丈夫、私がする」


不安。

だけど、リルに友達ができたようで俺もなんだか嬉しい。

「日々野梨琉」は悪い奴だと聞いたが、「リル」は愛されるようだ。


◇◇◇

「お待たせ」

「ううん、大丈夫!梨琉ちゃんは今日も可愛い」

「ありがとう」


私にできた新しいお友達は、他校の女子で、花恋ちゃんという。

そして今日、私は友達とショッピングモールに行くんだ。


「ねえねえ、梨琉ちゃん。これおそろにしない?」


おそろ…って?思わずネットで調べる。

なるほど、「お揃い」か…。


「いいね」

「わ、ほんと?やったっ」


「おそろ」にしたのはそれぞれ同じデザインのキーホルダー。

これがよくわからないキャラクターとかじゃなくて、花恋ちゃんの「K」、私の「R」、イニシャルだ。

だから、元王女の私でもつけられる。謎に高いプライドが許した。


「うち、くる?」

「わー、行きたい!」


それから家ではカードゲームなどをして、私たちの時間はあっという間に終わった。


「じゃあね、また今度!」


花恋ちゃんが帰ってから、もう一度今日「おそろ」にしたキーホルダーを見つめる。

世の中の学生って、こんななんだ。

私は…こんな風に、遊ぶことすら許されなかった。


◆◆◆

「リル姫様!どこにいらっしゃるのですか!」


私はリル。5さい。今、かくれんぼしているんだけど…。


「見つけました…。また逃げて」

「えへへ、ごめんなさい」

「全く、可愛いからいいですけど!」


だけど、それも許されなくなった。


「リル姫様ー!」

「ごめんなさい。お庭で花冠を作っていたの。ほら、上手にできたでしょう?あなたにあげるわ」


パシン!


花冠がはたかれ、ばらばらに砕ける。


「こんなものを作って!姫様、あなたは将来女王となられるのです、こんな馬鹿げた遊びはやめてください!」


教師に怒られる毎日。

だから、必死に頑張った。怒られませんように、またお庭で遊べますように…。


けれど、それは叶わなかったーー。











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