第8話 王女はスマホを気に入ったらしい。

「…かわい」


しまった。

口に出してしまった…!


「ん?何か言ったか」


ほっ。

よかった、聞こえていなかったようだ。

それにしても、俺は、リルを「可愛い」などーーどうしてしまったんだ、俺。


「行きたいところはないか?」


ああー。今の流れでいくとデートみたいになるじゃないかっ。

リルは知らないけど。


「そもそも、この「日本」には何があるんだ?」

「うーん。買い物に行くショッピングセンターとか、遊園地とか、あとは、水族館とか…とりあえず、なんでもある」

「ほぉ」


そこで、俺はあることを思いつく。


「リル。スマホを買いに行こう!」


なんだそれは、という顔をした彼女を、とりあえず着替えさせて手を引き連れて行く。


「あー、分かった、分かったから離してくれ」


外に出て数歩目、流石に焦りすぎたと反省した。

しかし、我ながらいい案だと思う。


「前、夏祭りの動画を見せたことがあるだろ?あれがスマホだよ」

「ほぅ…」


うーん、いまいち分かっていないが。

携帯ショップへ入る。


「こんにちは、どのような商品を見られますか?」



帰り際。


「すごいね…この世界は。こんなものまであるのか!」


リルはただひたすらにホーム画面を左右にスライドして楽しんでいる。

幼稚園児みたいだな。


クスッ


微笑ましくて、思わず笑ってしまった。


「あ、おい、今笑っただろう?」

「ああ、すまない。なんだか面白くて」

「何がだ!」


リルはだいぶ俺に心を開いてくれたようだ。


「いいか。これは「キーボード」と言って、まあ文字を打つものだ。それと、メールのアプリを入れておいたから、これで人と会話するんだ」


俺は早速メールを繋ぐ。


「何かあったら連絡してくれ」


それから俺はスマホの様々な詳細を説明した。なんか、今思うと俺も知らないことが沢山ある。



それから次の日、俺たちは水族館に行った。


「なんだこの生き物は?」

「サメというんだ」

「これは、どこに住んでる?」

「海だ」

「!?」


まあ、まとめておくと、知らないことが多すぎるんだ、異世界人は。

こっちの常識がまるで通用しないからな。


「生き物なんて、魔獣くらいしか見たことないぞ」


さらっと言うな、さらっと。

それがどれだけすごいことかもわからずに発言しないでくれ…。


「とび、はねるのか?」


イルカを見て驚いてもいた。

イルカショーは、楽しいというより未知の扉を開く感じだったのかな?


リルは、新しく手に入れたスマホで写真を撮っていた。

パシャパシャと撮る姿は、とりあえず地球の人には見えるかな。


リルは、スマホをすごく嬉しそうにしていた。

気に入ってくれて何よりだ。


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