第4話 私が学校へ行ったら、「あの人」に見つかったらしい。

「あと私、貴族じゃなくて王女だ」


ーーえ?


いや、待て。

一旦整理しよう。

王女っていうのは、国を治める国王の娘…だよな?つまり、めっちゃ偉い人、だよな?


「リル様って呼んだ方がいい?」

「いや、今更やめてくれ、気持ち悪い」


流石にそこまで言われると傷つくよ。


◇◇◇

この世界に来て一ヶ月が経とうとしている。

そろそろ、学校に行くかな。

制服はもともと着てたから、ある。カバンも持ってた。

ただ問題なのがーー。


「きゃはは。きったなぁい」


「やだぁ、来ないで気持ち悪い」


とってもハードないじめっ子、だということ。ーーああ、行く気が失せる。

とてもじゃないけど、王女の時にこんなのは経験しないから。



「おはようございます…」


視線が痛い。


「ああ、日々野さん。久しぶりです」


素っ気ない。こんな扱いなのに、いじめを続けてたって、どういう神経してるの?

しかし、HRホームルームが終わった後、一気に「日々野梨琉」の席へーーつまり私の席へ集まってきた。


「日々野さん、元気だった?」

「心配したよっ」


あー。なるほど。

「日々野梨琉」の家はお金持ちだ。だから、その恩恵に預かろうと…。


「ねえねえ、日々野さん。これ、お父さんから」


いやいや、賄賂かよ。こういうのはどの世界でも変わらないな…。


「あのぉ、日々野さん。ちょっといいですかぁ?」


なんだこの、耳に障る声は。


「どうした?」

「その…怜斗さんを取ってしまってすみませんでしたっ…!」


うーんと?

記憶を辿る。つまり、こいつが「日々野梨琉」の元婚約者である「怜斗」を取って、それを謝ってきた、と。

すごい勇気だ。その勇気だけは讃えてあげる。だけど…。


「…寝取ったわりに、反省のかけらも見えないね」

「えっ…」


こう言っては悪いけれど、世の中腐ってる。

寝取り寝取られ、残酷にもそれは隠蔽されるのだから。


「はぁ…私、忙しいの。時間の無駄」


話し方に気をつけながら言葉を紡いでいく。しかし…。


「わあぁあん。ごめんなさいっ。許してくださいっ」


はぁ、疲れる。

カズヤといる時のほうが何倍もいい。


「どうした、美亜?おい…梨琉。何をした!?」

「特に何も。勝手に喚いて迷惑です」


ここから立ち去ろうーーそう思った時。


「リルだろう?」


この「リル」は「梨琉」じゃない。

私の、本当の名前を呼んでいる気がするーー。


「誰?っ…!」


絶句する。

私が知っているーーあの人と、似すぎている容姿と雰囲気。


「ああ、リルだよな?好きだ」


ーーえ?




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