第2話 俺が拾ったのは傲慢な少女らしい。
「気安く話しかけるな」
ーーえ?
いやいや。それ。助けてくれた人に言う
「はぁ…とりあえず顔洗ってこい」
「は?お前、何を言っている?」
いや、まじでなにこいつ。
なかなかいい度胸をしている。今どきでも、目上の人に敬語で話すのが筋というもんだろう。
「そもそもここはどこだ」
「ここは俺の家だ」
「は?家?ちっさいな」
ああ、わかった。
こいつ、育ちがいいんだ。なんだよ、金持ちの娘か?だからこんな、居丈高なのか。
「どこの国だ?」
「どこって…日本だけど」
え、外国人?
その割には日本語ペラペラだな。
「日本?初めて聞く国だ」
いよいよわからなくなってきた。
とりあえず家にあった世界地図を持ってきてやる。広げると、彼女は唖然とした。
「初めて見る地図だな…。私が知ってるやつは、もっとこう…」
うーん、それはどこの地図?
考えてもわからないから、とりあえずこの件は彼女が話してくれるまで待っておこう。
しかし、やっぱり多分金持ちの娘だ。
「顔洗ってこい。俺は仕事に行くから」
「は?お湯は?タオルは?」
「ここにメイド?みたいなものはいない。自分でしろ」
なんか、金持ちの子に楯突くのって、楽しいかもしれない。
だって、そういう子ってプライド高そうだから、ペラペラとは話さないでしょ。
「朝ごはんは置いておく。ああ、そうだ。名前は?」
「えーっと…リルだ」
「そうか、リル。俺は一也だ」
「…」
無視された。まあ、傲慢さは仕方ないか、個性だ。
「よお、望月クン」
「やめてくれ、その呼び方は」
仕事場で、同期の奏人が俺に話しかけてくる。
「それにしても…元気がない。どうした?まさか、浮気されたとか」
そんなわけないよなー、と奏人は自分が言ったことに苦笑しているが、事実なんだ。
「それが、そうなんだ。実は…」
かくかくしかじかを話すと、奏人の顔は怒りでいっぱいだった。
「なんだよそれ…ていうか、見る目ないねぇ。一也の良さわからないなんて、よっぽどだわ」
流石に女の子を拾ったことは言わないことにした。だって、誘拐だと勘違いされそうだからな。それに、よくわからない女子だ。
「すごいじゃないか」
何も考えない…俺には何も起こってない。だから何も考えるな、全集中…
という感じでやってたら、上司に褒められてしまった。
何というか、皮肉というか…。
「ただいま」
「ああ、お帰り」
何も粗相していないようで、ちょっとホッとした。
「ああそうだ。私、わかったよ」
「え?」
「この世界、住んでるところと違うとこだ」
ーーえ?
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