異世界転生してきた王女様と出会ったら、いつのまにか住みついていた。なんで俺に懐いてるの?

月橋りら

第一章 二人の出会い

第1話 俺はやけ酒して、少女を拾ったらしい。

「おい、瑠奈。何してんの?」


今日は、出張を終えて戻ってきたところだ。

予定より一日早く終わって、早く瑠奈の顔を見ようと急いで帰ってきたところ、なのだが…。


「えっあ、えと…その、これは違うの!あの男が襲ってきて…」


いやいや、無理だろ、その言い訳は。

さっきあんなに「愛してる」を叫びまくってたじゃないか。


「悪いけど、録音してる」

「えっ…」


浮気相手と見られる男は、俺と同じくらいの年齢で、いかにもチャラそうなやつだ。

そして彼らは、体を重ねながら愛を囁きあっていたという…。


「はぁ、別れようか」

「えっ、ちょっと待って!私の本命は一也、あなたなの!」


なら、浮気すんなよ。

それに瑠奈、あんたには拒否権ないんだけど。


「浮気相手、俺と真逆のタイプじゃん。それに、これ以上浮気を疑いながら暮らすって、結構きつい」

「な、なんでもするから!」

「へえ、ほんとに?」

「うん!」

「じゃあ、出てって。そして二度と俺の前に姿を見せるな」

「っ…!」


彼らは服をかき集めて、急いで出て行った。


「ふぅ…」


ベッドに座ろうとして、ぴた、と止まる。

ここは瑠奈が、浮気相手と愛を囁きながら体を重ねていたところだ。

そんなところに、座りたくなどない。

今までもあったのだろうーー考えるだけで気持ち悪い。


いいや、そもそもこの部屋にいること自体気持ち悪い。


「とりあえず、酒飲も…」


財布とスマホだけ持って、外に出る。風が冷たかった。



「それ以上飲んで、大丈夫か?」


隣の客が俺に注意するが、そんなの気にしない。

今日は仕事を頑張ったご褒美だ。うん、そうしよう。浮気は夢だ。きっと帰ったら、瑠奈が笑顔で「お帰りなさい、お疲れ様」って言ってくれるはず…。



「やべ、飲みすぎた…」


視界が時々歪む。それも、結構。

あーあ、人生最悪の日だーー。


「うぅ…」


うん?女の子の声?そういや、なんだか前に女の子がいるような…。


ドサッ


「おい、大丈夫か?」


まじかよ。

女の子は倒れてしまった。それも、よりにもよって酔っ払った、この俺に。

その後、多分家に上げたのだろう。

どうやって帰ったのかは覚えていない。



「ん…」


朝、かな?

二日酔いで少しクラクラするけど、まあ仕事に支障はないだろう。

あ、そういえば女の子を拾ったような…。


「おい、入っていいか?」


コンコン、とドアを叩くとともに、彼女を置いたっぽい部屋を尋ねる。


「…」


返事がないから、とりあえず入る。だって、俺の家だもん。


「おい、大丈夫か…」

「気安く話しかけるな」


ーーえ?









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る