新たな世界
デジタルな存在となった奈緒は現実世界とデジタル世界を自由に行き来でき、動き回れるようになっていった。
デジタル世界にはなにかが漂っていた。
「これって全部データ?」
そこには、インターネットにある情報や人間の記憶などといった様々な情報があった。
「あれ、これって…私の記憶?こっちは…?」
そこには、奈緒の生まれてからの記憶の情報があり、その隣には親友である結衣の記憶の情報もあった。すると、突然目の前に光の渦ができ、たちまち、四肢が生えた丸い生物になった。
「あなたは…?」
奈緒が不思議そうに聞く。するとその謎の生物は幼い声で答える。
「僕はレジデ。この世界の住人だ。誰かがこの世界に入ってきた音がしたから来てみたんだ。君は?」
奈緒は自分に起きたこと、今まであったことを話した。
「なるほど…でもこの世界も楽しいよね!自由に飛び回れるんだから!」
「うん」
実際、奈緒はデジタル世界を楽しんでいた。しかし内心、どこか孤独感や虚無感を覚えていた。すると、突然目の前にパソコンの画面のようなものが浮かび上がった。不思議に思っていると、それを見透かしたかのようにレジデが言う。
「あーこれはね、現実世界の人間がGoogleを開いたんだよ。ここはGoogleネットの中心地だからね。他にも色々なネットがあるよ。」
「でも、私と私の友達の記憶がここにあるけど…」
「あー、記憶情報はいつも漂ってるんだよ。」
また、新しい画面が開いたと思うと、次々に奈緒の周りに画面が開いていった。奈緒が驚いていると、
「現実世界では今は18時くらいかな。この時間になるとみんなネットを利用するからね。アクセスも集中するんだ。」
「え、私がこの世界には行ってきたの夜中だけど、もう18時?」
「あー、あっちとこっちの時間の進み方が違うんだよ。こっちが遅いの。まぁ、楽しんで~。」
そう言い、レジデはまた光の渦のなかに消えていった。
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