第2話

壮之佑と山岸は、エマニュエルの指示で広い訓練場に案内された。王都管理局の地下深くに位置するその場所は、巨大な石造りの空間であり、至るところに剣や盾、槍といった武器が所狭しと並んでいる。訓練場にはすでに多くの戦士たちが集まり、黙々と訓練を行っていた。


「ここが君たちの新たな戦場となる場所だ」とエマニュエルは二人に言い放った。


壮之佑は周囲を見渡しながら、不安そうに口を開いた。「僕たちが本当にここで戦えるんでしょうか?正直、ただの高校生が剣を持って戦うなんて、考えられないんですけど…」


エマニュエルは微笑んで、彼の肩に手を置いた。「君たちにはまだ自分の可能性が見えていないだけだ。だが心配はいらない。この世界では君たちが持つ潜在能力が目覚めることがある。少なくとも、私が認めたからには、君たちはそれに値する力を持っているはずだ」


その言葉を聞いても、壮之佑の不安は拭えなかった。しかし、エマニュエルの強い眼差しに圧倒されるように、彼はただ頷くことしかできなかった。


「では、実際に君たちの力を見せてもらおう」と言って、エマニュエルは手を振り、二人に一対の木剣を差し出した。「この剣を使って、私に挑んでみろ」


「えっ、あなたにですか?」山岸が驚きの声を上げた。「エマニュエルさんみたいなチートな人に勝てるわけないですよ!」


エマニュエルは軽く笑いながら、「心配するな。本気でやるつもりはない。ただ、君たちがどの程度の技量を持っているのかを見極めたいだけだ」と返した。


壮之佑と山岸は恐る恐る剣を握りしめ、エマニュエルに向き直った。彼らの中で、エマニュエルがどれほど強力な存在であるかが徐々に実感されつつあったが、それでも逃げるわけにはいかなかった。


「いくぞ」とエマニュエルは静かに言うと、瞬時に姿を消したかのように、二人の視界から消えた。


「えっ、どこに…」山岸が戸惑う間もなく、エマニュエルの姿が突如として背後に現れた。


「まずは速度だ」と彼は呟き、木剣を軽く振るった。それだけで山岸は床に叩きつけられたように転倒し、息を切らして呻いた。


「早すぎて何が起こったかも分からなかった…!」山岸は呟く。


壮之佑も驚きで目を見開いた。エマニュエルの動きはまるで瞬間移動のようで、目で追うことすらできなかった。


「次は力だ」とエマニュエルは言い、今度は壮之佑に向かって剣を振るった。彼は反射的に剣を構えて受け止めようとしたが、その一撃の重さに耐え切れず、剣ごと弾き飛ばされ、後ろに倒れ込んだ。


「お前たちがここに来る前の生活では、こういった力や技術は存在しなかっただろう。だが、この世界ではそれが日常だ」とエマニュエルは説明を続けた。「君たちは今から、それを身につけ、さらに強くなる必要がある」


壮之佑は地面に倒れたまま、エマニュエルの強大さに圧倒されていた。自分たちがどれだけ無力であるか、彼の一挙一動がそれを痛感させた。しかし、彼はそのまま諦めることはできなかった。何としてでも、この世界で生き残るための力を手に入れなければならない。


「もう一度…挑戦させてください」壮之佑は決意を込めて立ち上がり、再び剣を握り直した。


「いいだろう」とエマニュエルは微笑み、少し身を引いて構えを取った。「その意気だ、壮之佑」


今度は壮之佑が先に動いた。彼はエマニュエルに向かって突進し、全力で剣を振り下ろした。しかし、その一撃も簡単に受け止められ、次の瞬間、壮之佑は再び床に叩きつけられていた。


「まだまだだな」とエマニュエルは言いながら、彼に手を差し伸べた。「だが、君にはその可能性がある。何度でも挑戦する意志があれば、いつか私のような強さを手に入れることができるだろう」


「本当に…そんなことができるんですか?」壮之佑は疑問を口にしながらも、その言葉に希望を見出していた。


「もちろんだ。だが、そのためには覚悟が必要だ。どれほど過酷な訓練にも耐え、限界を超えようとする意思がなければ、この世界で生き残ることは難しい」とエマニュエルは真剣な表情で答えた。


その後、エマニュエルは壮之佑と山岸に様々な訓練を課した。剣術、体力、そして精神的な耐久力を鍛える厳しい訓練が続けられた。エマニュエルは常に冷静で、圧倒的な力を見せつけながらも、決して二人を見捨てることはなかった。


訓練場での一日が終わり、壮之佑と山岸は体中に疲労を感じながらも、達成感に満ちた顔をしていた。彼らはエマニュエルの指導のもと、少しずつ自分たちの力を引き出し始めていたのだ。


「これで終わりではない。明日からも訓練は続く。君たちはまだ始まったばかりだ」とエマニュエルは二人に言った。


「わかりました…ありがとうございます、エマニュエルさん」壮之佑は礼を述べた。


「感謝する必要はない。君たちが強くなることが、この世界を守るための力になる。だからこそ、私は君たちに力を与え続ける」とエマニュエルは言い残し、静かに部屋を去った。


壮之佑と山岸は、互いに顔を見合わせた。そして、彼らはこの新しい世界で生き抜くために、エマニュエルのような強さを手に入れることを誓った。果たして彼らは、無敵のエマニュエルに近づくことができるのか。それとも、さらに未知なる敵が待ち受けているのか――。

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