王都管理局から始める異世界騎士生活

白雪れもん

第1話

「…もう、朝か。」


いつものように目覚ましのアラームが鳴り響き、鷹嘴壮之佑はしぶしぶ布団から這い出した。窓の外は曇り空で、何とも言えないダルさが漂う。何度か伸びをして、ようやく動き出す。


「今日も学校か…」


とりあえず制服を着て、適当にパンを口に放り込み、壮之佑は通学路を歩き出す。電車に揺られながら、スマホをいじる。何も特別なことはない、いつもの一日が始まるはずだった――その時。


突然、壮之佑の視界が暗転した。


「え…何だこれ?」


辺りを見回すと、見知らぬ場所に立っていることに気が付く。なんだか中世ヨーロッパの街並みのような場所だ。目の前には城壁がそびえ立ち、人々が行き交っている。


「え、待って…ここどこ?」壮之佑は混乱していたが、周りを見渡してみると、同じ制服を着た生徒たちがあちらこちらに点在していることに気が付く。どうやら、蘆ケ谷高等学校の一年生全員がこの見知らぬ世界に転送されてしまったようだ。


その時、隣から声がした。「おい、壮之佑!どうしたんだよ、お前も転送されちまったのか?」


「…山岸?お前もかよ!ってか、これ何?ドッキリ?」


「いや、さすがにこれはドッキリじゃないだろ…おそらく、異世界転送とか、そういう類のアレだな。」


「そんなの現実にあり得るかよ!」と突っ込もうとするも、この状況では何が起こっても不思議ではない。


山岸と壮之佑は、困惑しつつも、とりあえず行動を共にすることに。街を歩いていると、周りの人々が何やらこちらをジロジロと見ているのに気が付く。


「何だか、やけに注目されてるな…」


「おい、もしかして俺たち、超有名人になっちまったんじゃないか?」と山岸が冗談めかして言う。


だが、その注目は、二人が考えるような歓迎ムードとはほど遠いものだった。次の瞬間、制服姿のままの二人は、突然現れた屈強な兵士たちに囲まれた。


「貴様ら、王都管理局の命令により、ここで拘束する!」


「え、ちょ、何?冗談だろ?!」


壮之佑と山岸は、屈強な兵士たちに両脇を掴まれながら、威圧感のある石造りの建物へと連れ込まれた。内部は要塞のような造りで、広い廊下には武装した兵士たちが緊張感を漂わせて行き来している。二人は無言のまま案内され、やがて一際豪華な扉の前で立ち止まった。


「ここで待て」と言われ、扉が重々しく開かれる。二人は兵士たちに促されるまま、室内に足を踏み入れた。


部屋の中央には大きな机が置かれ、その後ろに一人の男性が座っていた。彼は背が高く、鋭い目つきをしており、長く美しいラベンダー色の髪が印象的だった。まるで彫刻のように整った顔立ちに、彼の強烈なオーラが漂っている。鋭い眼差しで二人を見つめると、その目に僅かな興味が宿った。


「君たちが異世界からの転送者か。聞いていたよりも普通だな」


「え、あの…どういうことですか?」壮之佑は戸惑いながら尋ねた。


男性は立ち上がり、ゆっくりと二人に近づいてきた。その動きはまるで音もなく、しかし確実に圧倒的な力を感じさせるものだった。


「私はエマニュエル・フェンリー、王都管理局の委員兼戦闘員だ。君たちがこの世界に突如現れた転送者であることは、すでに把握している」


「転送者って…どうして僕たちがここに?」山岸が恐る恐る聞いた。


エマニュエルは微笑を浮かべ、やや気さくな口調で答えた。「どうしてか?それは我々にも謎だ。だが、この世界に君たちが現れた以上、放っておくわけにはいかない。異世界から来た者が持つ潜在能力は、未知数であり時に危険だ。君たちの力を確認し、必要とあれば管理下に置く」


「力?僕たち、普通の高校生ですよ。何の力もないし、戦うなんて無理です!」壮之佑は思わず叫んだ。


エマニュエルは鋭い目で二人を見据えた。「君たちが持つ力がどれほどのものか、まだ分からない。それを確かめるために、君たちには選択肢を与えよう。このまま王都管理局で監視下に置かれるか…それとも、この世界の秩序を守るために、私と共に戦士として立ち上がるか」


「戦士…?」山岸は驚いて声を上げた。「そんなの無理だって!俺たちはただの学生なんだぞ!」


エマニュエルは少し目を細めた。「確かに、君たちは今はただの学生かもしれない。しかし、異世界から転送された者はこの世界で特別な力を引き出すことがある。君たちもその例外ではない。もし君たちがその力を手にし、この世界で生き抜く覚悟があるならば、私は君たちに訓練を施し、共に戦う仲間として迎え入れよう」


壮之佑と山岸は顔を見合わせた。これが冗談でないことは明らかだった。壮之佑は深く息をつき、考えた末に言葉を発した。「もし…もし僕たちがこの提案を断ったら?」


エマニュエルは冷静に答えた。「その場合は、王都管理局の監視下に置かれることになる。君たちの動向を厳しく見守り、危険と判断されれば、処分も検討されるだろう」


「…処分?!」山岸は青ざめた。


壮之佑はエマニュエルの目をまっすぐに見つめた。「分かりました。僕たちはこの世界で生き残るために、あなたの提案を受け入れます」


エマニュエルは微笑を浮かべ、満足そうにうなずいた。「良い決断だ。君たちは今日から王都管理局の一員として、共にこの世界の秩序を守る戦士となる。名前を変えることをお勧めする。新たな世界で、新たな自分として生きるために」


壮之佑と山岸は互いにうなずき、新たな決意を胸に抱いた。二人はこれから、異世界での新たな生活を始める。新たな名前と共に、未知なる戦いへと足を踏み入れることになるのだった。

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