17 秋葉と伊達

 朝倉家の座敷牢。

 秋葉が手足を縛られ閉じ込められている。

 見張りに絡んでいる。


 秋葉 も~最近こういうの多すぎ。確かにボクが悪かったとこもあるけどさぁ、何で朝倉家ってそんなに団結してるの?みんなあの子のこと大好きすぎない?総出で駅まで迎えに来るとか、あり得なーい。っていうかそんな強かったならもっと早く言ってよね。落ち目だとか没落寸前とか言って、全然元気じゃん。もしかしてそういう作戦?油断させておくみたいな?何て言うんだっけ、忠誠心?そういうのって誰かに教えてもらってるの?それともみんな本気であの子のことを信じてるの?

見張り …。

 秋葉 ねえ、何か言って?ボク一人で喋っててもつまんなーい。神父様は自由なのに、ボクだけ捕まってるのも納得いかなーい。武田クンはいつの間にかいなくなってるし、本当最悪。

見張り …。

 秋葉 あと一週間しかないのにさ、こんなとこで見張り役っていうのも損だよねぇ。可哀想。何かやりたいこととかないの?会いたい人とか、食べたいものとか?ボクはまだまだいっぱいある。そ・れ・に、せっかく死ぬなら、戦いながら死にたいよね。何もしないで殺されるのは、絶対嫌。誰がいいかなぁ、武田クンでもいいけど、最後はやっぱり…。


 手を縛られた伊達、香川に連れられてやってくる。


香川 ここで大人しくしててください。

秋葉 あれ?神父様じゃん。いらっしゃい~。


 香川、伊達を牢に入れ、見張りを下がらせる。


香川 …水海様の無事が確認出来たら、解放します。逃げようとしたら殺すように言ってあります。お願いですから、問題は起こさないでください。

秋葉 それは優しさ?それとも怠惰?

香川 海人さんと敵対するなら、使える駒は多い方がいい。それだけです。


 香川、出ていく。


秋葉 彼も彼で甘いよねぇ、あの子ほどじゃないけど。

伊達 そうですね。


 伊達、縄抜けしている。


秋葉 あ、ずるーい。ボクのも取って♡

伊達 質問に答えてくれたら、取ってあげます。

秋葉 えー、しょうがないなぁ。何?


 伊達、秋葉に近づく。


伊達 シスターを殺したのは、あなたですか?

秋葉 やっぱり、それが聞きたくてわざとここに来たんでしょ?性格悪ぅい。それでも神父様?

伊達 それで?

秋葉 ボクが殺した。

伊達 …。

秋葉 って言ったらどうする?ボクと殺ってくれる?

伊達 …いいえ。

秋葉 つまんないの。じゃあ教えてあーげない。

伊達 …そうですか。


 伊達、秋葉から離れた入口付近に座る。


秋葉 神父様はさぁ、あの子のことどう思う?

伊達 どうとは?

秋葉 ボクはねぇ、結構好きだよ。強くてかっこよくて一生懸命で、それが全部空回りしてる感じが、すごく好き。自分で自分のことがわからなくて、結局女の子に助けてもらってるのも好き。恵まれてるよねぇ、家族にも幼馴染にも。

伊達 …そうですか。

秋葉 神父様は?

伊達 彼のことも愛してますよ。

秋葉 違ぁう、そういうんじゃなくて、それは隣人愛とか、博愛ってやつでしょ?ボクが聞きたいのはお行儀のいいお手本通りの言葉じゃないんだけど。恋バナしようよ、神父様。ボクはね、きっと、あの子のことが好きなんだと思う。どうしようもなく眩しくて、曇ることのない光だから、きっと、ボクのことも導いてくれるような気がするんだ。でも、あの子の目には、ボクじゃない、別の誰かが映ってる。そんなの、許せないよね?

伊達 …恋をしてるんですね。

秋葉 恋?これが恋!?恋ってもっと軽くてふわふわしたものだと思ってた。ボクのとこにいる子たちはそういう風に話してたから。でも、そっか、恋にも種類があるんだね。

伊達 そうですね。

秋葉 神父様は、シスターに恋してたの?

伊達 さあ…。

秋葉 いいじゃん、教えてよ。どうせもうすぐ死んじゃうんだし。

伊達 …私が何もしないで殺されるとでも?

秋葉 え?逆にここから何か出来るの?刀も奪われちゃってるのに?しかも神父様、本調子じゃないでしょ?

伊達 できる、できないではなく、やるんです。

秋葉 いかにも脳筋って感じ。ボク、神父様のそういうところ、良くないと思うなぁ。

伊達 何とでも言ってください。

秋葉 あの子はさ、神父様のことが好きだよ。

伊達 …彼が見ているのは、私じゃないでしょう。

秋葉 そうだね。でも気づいてない、いや、気づきたくないのかも?教えてあげたら?勘違いしてるよって。

伊達 そこまでする義理はありません。

秋葉 随分冷たいね~?お得意の愛はどうしたの?神父様はみんなを愛してるはずでしょ?愛してあげなよ、あの子のことも。底なしの愛で包んであげなよ。あの子が君に向けてる愛の分だけでも、返してあげなよ。博愛なんかじゃない、ホンモノの愛で。

伊達 この戦いが終わったら、考えます。


 頭上で爆発音がする。


秋葉 わあ、何、お祭り?

伊達 ある意味そうですね。これは少し…想定外ですが。


 伊達、牢の戸を開けて外に出る。


伊達 来ないんですか?

秋葉 え?


 秋葉を縛っていた縄は切れている。


秋葉 え、いつの間に?

伊達 置いていきますよ。

秋葉 待って待って、ボクも行くから!


 伊達、秋葉、出ていく。

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