11 地下牢(東)

 座敷牢。

 朝倉がいる。

 ここでも上から演説の声が聞こえる。


朝倉 …うるさいわあ。


 丸目、おどおどしながらやってくる。

 朝倉、丸目に気づく。


朝倉 ねえ。

丸目 うひゃあ!ごめんなさい!…え、あ!朝倉さんじゃないですか!ちょっと待ってください、今そこから出してあげますね!

朝倉 え、何で?

丸目 今、上が大変なことになってるんですよ!早く戻って何とかしてください!

朝倉 何とかって?

丸目 政府の人たちがそれぞれの地区を一個にしようと躍起になってるんです。このままだと、刀京が刀京じゃなくなっちゃいます!

朝倉 いや、それはわかるけど、俺一人で何とかできることでもないでしょ。

丸目 はい。だから、他の皆さんとも手を組んでもらって…。

朝倉 え、やだ。

丸目 やだ!って、子供みたいなこと言わないでくださいよ。

朝倉 だって武田には家宝の刀奪われてるし、秋葉は水海を返してくんないし。伊達は…。

丸目 あ、その水海さんなんですけど、私、居場所わかりますよ。

朝倉 え。

丸目 ゴールデンパレスの王様の宮殿にいるみたいです。あ、大丈夫です!取って食われたりはしてないみたいですから!

朝倉 はぁ…何やってんの。

丸目 あなたを助けるためじゃないですか?

朝倉 …は?

丸目 お金が必要だから、王様と交渉してるんじゃないんですか?

朝倉 …はあ。

丸目 あ、危ないのでちょっと下がっててください!刀でこの鍵ごと斬っちゃうので!


 丸目、鍵を斬ろうとするがなかなか斬れない。


丸目 あれー?おかしいなあ。ちょっと待ってください。

朝倉 …貸して。

丸目 あ、はい。どうぞ!


 丸目、刀の柄を差し出す。


朝倉 逆。

丸目 え、こっちですか?危なくないですか?


 丸目、刀の切っ先を差し出す。

 朝倉、峰の部分を上手く持って鍵を斬る。


丸目 おぉー!器用ですね!あ、その刀、持っててください!私が持つよりいいと思うので!


 朝倉、座敷牢から出る。


朝倉 …ここはどこなんですか。

丸目 東の地区の地下です。

朝倉 あなたは出口がわかるんですか。

丸目 わかりますけど、その前に他の人たちを助けに行かないと!三人寄れば文殊の知恵です!

朝倉 …はぁ。

丸目 ついてきてくれますよね?ね?朝倉さん!

朝倉 まぁ、はい。

丸目 良かったぁ!一人で監視の目をくぐるの大変だったんですよ!それじゃ、行きましょう!

朝倉 どこに行くんですか。

丸目 まだ決めてません!

朝倉 私が提案しても良いですか。

丸目 …?行く当てがあるんですか?

朝倉 家宝を取り戻します。

丸目 家宝!?それは大変!わかりました!行きましょう!どっちですか!?


 丸目、朝倉去る。

 香川と伊達がやってくる。


香川 いない…?まさか、若はもう…!

伊達 落ち着いて。鍵が壊されてます。誰かが、ここにいた誰かを連れて行ったんでしょう。

香川 誰かって誰?

伊達 監禁されていたのがご子息だとして、助けるのは…。

香川 まさか秋葉と武田じゃないでしょうし。

伊達 同感です。それに、そもそも彼らも閉じ込められているはず。

香川 え?秋葉はともかく、武田は政府側の人間じゃ…?

伊達 政府も一枚岩じゃないんです。たかが町一つ制圧するのに、これだけ時間がかかっているのが何よりの証拠でしょう。

香川 言われてみれば。

伊達 少なくとも、私たちの敵ではなさそうですね。

香川 俺たちの他に一体誰が…?

伊達 しっ。


 複数の足音、話し声が聞こえる。


伊達 誰か来ます。

香川 まさか、脱走がバレたとか…?

伊達 さあ。乗り切る方法は二つです。一つ目。無視して別の地下牢へ行く。二つ目。ここで素早く返り討ちにする。ちなみに私のオススメは二つ目です。

香川 いやいや騒ぎを起こすのはまずいって…!

伊達 ですから、なる早で片付けるんですよ。


 政府軍、入って来る。


戦闘員① 何だお前たちは!

  伊達 ほら、あなたがもたもたしてるから。

  香川 え、これ俺が悪いの!?

戦闘員② こいつ、斎庭の神父だぞ。

戦闘員③ 逃げてきたのか!

  伊達 二つ目の方法で良いですね?

  香川 ああ、もう、こうなったらしょうがないですね!

戦闘員① 朝倉をどこへやった!

  伊達 おや、ご子息は政府の手に渡ってないようですよ。

  香川 よかった…。峰打ちで頼みますよ。

  伊達 もちろん。

戦闘員② 何をごちゃごちゃ言っている!

戦闘員③ こいつらを捕えろ!


 戦闘。

 伊達と香川、殺さない程度に痛めつける。


伊達 どの程度なら生きててくれますかね?

香川 俺に聞かないでください!


 二人、全員を気絶させる。


伊達 政府も質が落ちましたね。

香川 …本当に殺してないですよね?

伊達 生きてますよ。虫の息ですが。


 伊達、一人をぶん殴って覚醒させる。


 伊達 起きてください。あなたに聞きたいことがあります。

戦闘員 …何も…言うものか…。

 伊達 安心してください。あなたのような下っ端にそんな高度な情報は求めていません。聞きたいことは、政府がいつ、刀京殲滅作戦を実行するのか。その日時だけです。

 香川 えっ…?

戦闘員 …はっ、答えるとでも?


 伊達、戦闘員の腕をへし折る。

 戦闘員、悲鳴をあげる。


 伊達 さっさと答えろ。次は足だ。それとも腕の関節を増やしてやろうか。

 香川 ちょっ…死んじゃいますって!

 伊達 死にませんよ。まだ。

戦闘員 …は、はは、あんた、神の教えとやらは、どうした?


 伊達、戦闘員の腕を折る。

 香川、ドン引き。


 伊達 政府は、いつ、作戦を実行する?

戦闘員 …くっ…今から、何をしても手遅れだ。一週間後には、刀京は火の海になる…!

 伊達 そうか。


 伊達、戦闘員を気絶させる。


香川 うわぁ…痛そう。

伊達 一週間ですか。ご存じでしたか?

香川 いえ、初めて聞きました。

伊達 政府は刀京に住む罪のない人々もろともなかったことにするつもりなんでしょうね。嘆かわしい。

香川 どうしてそう言い切れるんですか?まだわからないでしょ?

伊達 私が提案した刀京殲滅作戦です。隅々までよく知っていますよ。

香川 え?ってことは、政府に加担してたってこと?

伊達 加担というか、私は元々政府の人間です。

香川 えー!?

伊達 ご存じかと思ってました。

香川 いやいやいや初耳なんですけど!?

伊達 私の脱走がバレるのも時間の問題です。早く行きましょう。聞きたいことは道すがらお答えします。

香川 それはありがたいですけど…いや、だからそっちじゃないって!あんた先に行かないでください!


   香川、伊達、去る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る