05 朝倉と伊達
朝倉家。
伊達と香川が話している。
伊達 どうしても会わせていただけませんか。
香川 申し訳ありませんが。
伊達 そうですか。では、また後日伺います。
香川 えっまた来るんですか?
伊達 迷惑は承知です。
香川 んじゃもう二度と来ないでください。これ以上そちらと変に関わるのは…。
伊達 それはこちらも同じことです。他の地区との対立は避けたい。
香川 そこまでわかっているなら…!
伊達 わかっていても、私たちだけではもうどうしようもないのです。ご子息に会わせていただきたい。
香川 いくら頼まれても無理です。帰ってください。
伊達 また明日来ます。
香川 いやだから、もう来ないでって言ってんじゃん。人の話聞こうよ。
伊達 ですから、会わせていただけるまで帰れませんと。
香川 いや、違うじゃん。そうじゃないじゃん。
伊達 あなたこそ人の話を聞いてください。
香川 え、これ俺が悪いの?
朝倉がやってくる。
朝倉 何をしているところですか。
香川 若!
伊達、朝倉に礼をする。
朝倉 え、何、宗教勧誘?
伊達 勧誘などいたしませんよ。どの神を信じようとも個人の自由です。
朝倉 え、で?
伊達 手を組みませんか。
朝倉 ね。だと思った。
伊達 勢力の均衡は崩れかけています。もはや四竦みのままではいられませんよ。
朝倉 なんかあったんですか?
香川 …斎庭、炎獄と一悶着あったんですよ。
朝倉 へえ。
伊達 そちらも、花街に乗り込んだそうで。
香川 どこまで知っている。
伊達 あなた方が求めているものは全て。
香川 脅すつもりか。
伊達 まさか。わかっていらっしゃるでしょう。
香川 全てお見通しってわけか。
伊達 お互い様です。利害は一致していると思いますが。
朝倉 えっ、ちょっと二人で話進めないでもらえますか。…邪魔。
朝倉、香川をどかす。
香川 あぶな!ちょっ、若…。
朝倉 …。
香川 …わーかーりーまーしーた。どきゃいいんでしょどきゃ。はい。
香川、去る。
伊達 仲がよろしいんですね。
朝倉 と思うじゃん?そうでもないよ。
朝倉、壁にもたれかかる。
朝倉 で、何でしたっけ?手、組むんでしたっけ?
伊達 他に策がありますか。
朝倉 …まあ、それが最善だよねー。
伊達 おや、案外すんなりと受け入れてくれるのですね。
朝倉 いや正直、こっちも行き詰まってるんですよ。
伊達 なるほど。願ったり叶ったりというわけですか。
朝倉 どうもね。
朝倉、立ち上がる。
伊達 許嫁だけでなく、家宝もあちらの手中にあるとか。
朝倉 あんたも、大事な子供が奪われたんですってね。
二人の刀が交わる。
伊達 お互い借りはつくりたくないでしょう。
朝倉 まあ、ね。
伊達 子供たちの保護をお願いしたい。代わりに門下として差し上げます。
朝倉 じゃあ、家宝と水海の居場所。と、家臣、あげるね。
二人、同時に離れて納刀する。
伊達 では、私はこれで。
伊達、歩き出す。
朝倉 本当に良いんですか。
伊達、立ち止まる。
朝倉 簡単に信用して。
伊達 その言葉、そっくりそのままお返ししますよ。
朝倉 …ね。じゃあ、そういうことで。
二人、最初から最後まで目を合わせずに去る。
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